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フリマアプリの恋人
第5章 チャイナローズの躊躇い
「…きよたん!ちょっときよたん!」
喧騒しく研究室のドアが叩かれる。

…馴れ馴れしい呼び方…。
そしてこんな叩き方をするのは…一人しかいない。
…ゼミ生の岡田瞳だ。

「…ノックと言うのはもっと静かにするものだよ。
おはよう、岡田さん」
ドアを開けて柊司は、やや皮肉気味に言う。
「お願い!きよたん!レポートの提出期限延ばして!」
…いきなり神社で拝むように手を合わせる瞳の姿が現れた。
ああ、なるほどと合点をいかせる。
「だめだよ。提出期限は変えられない。
それは教務課の管轄だ。ごきげんよう」
さっさとドアを閉めようとすると、女子と思えぬ怪力で押し留められる。
柊司はぎょっとした。
「ちょっ…!」
「お願い!きよたん!あたし、今回単位落とすわけいかないの!留年の危機なんだよ〜!」
大声で叫ばれ、柊司は狼狽する。
「静かにしなさい。何かと思われるだろう?」
瞳はドアにしがみつき、物凄い形相で食い下がる。
「お願い!なんとかしてよ〜!きよたん!頼むよ〜!」

…これ以上騒がれても厄介だ。
柊司は諦めて瞳を中に入れる。
「…入りなさい。話だけは聞こう」
「やった!ありがとう、きよたん!」

小躍りしながら研究室に雪崩れ込む瞳にため息を吐きながら、柊司はドアを静かに閉めた。
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