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フリマアプリの恋人
第5章 チャイナローズの躊躇い
車を駐車場に停め、柊司は店の階段を昇る。
…夜の潮の香り…穏やかな波の音…。
ほっとするような懐かしい感情が胸に満ちる。

店の扉には仕舞い中のプレートがかかっていた。
扉を開けると同時に、澄佳がエプロン姿のまま抱きついてきた。
しばらく柊司の胸に貌を埋め、くぐもった声で告げた。
「…会いたかった…!」
後ろ手に扉を閉め、強く抱き寄せる。
儚げな花の薫りがその美しい髪から漂う。
「…僕もだ…会いたかった…!」
「…一週間が一年に感じたわ…」

形の良い顎を持ち上げ、唇を奪う。
「…可愛い…澄佳…」
…柔らかな唇…甘い吐息…そして、なめらかな舌…。
愛おしく…食べ尽くしてしまいたいほどに、柊司の官能を刺激する。
男の深く濃厚な口づけに、澄佳は吐息を弾ませる。
ようやく唇を解放され、潤んだ瞳で見上げる。
そうして、恥らうように微笑った。

「…お腹が空いたでしょう?
今すぐお食事を用意するわね…」
キッチンに行こうとする華奢な手を強く引いて、引き留めた。
桜貝のように可憐な耳朶に、艶めいた声で吹き込む。

「…食事の前に、君が食べたい…」
澄佳の白くほっそりとしたうなじが、一瞬にして桜色に染まった。

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