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フリマアプリの恋人
第5章 チャイナローズの躊躇い
由貴子から電話があったのは、翌日のことであった。
「…柊司さん、週末はお忙しい?
もし良かったら、土曜日に少しうちに来ていただきたいのだけれど…」
遠慮勝ちな…けれど、どこか縋るような声であった。
…土曜日か…と胸が少し痛みながら答える。
「…すみません。母様。週末は出掛けていて…。
明日、瑠璃子の病院にお見舞いに行くつもりなので、その時にお会いできませんか?」
ふっと淡い吐息が聞こえ、優しい微笑みの気配がした。
「…そう…いいのよ。
こちらこそ、いきなりごめんなさいね。
…柊司さんはお忙しいものね。気にしないで。またの機会で構わないから…」
「…あの…母様、何かありましたか?」
…由貴子は滅多なことでは電話をかけてこないし、柊司に自分からお願いをすることもないからだ。
「…いいえ、何もないわ。
…それよりも…」

…優しい声が聞こえた。
「…柊司さん、恋人ができたのね。おめでとう」
一瞬声に詰まる。
…かつて抱きしめた由貴子の華奢な身体…床しい香に似た花の薫りが蘇り、思わず目を閉じた。

…この悩ましい背徳の想いと、決別しなければ…。
今がその時なのだ…。

「…はい。母様」
「良かったわ。本当に…。
きっと、可愛らしくて素敵なお嬢様でしょうね」
直ぐに柔らかな由貴子の声が返ってきた。
…意を決して伝える。
「…ええ。とても素敵なひとです。
僕は…彼女にプロポーズしました」

…微かに、息を呑む気配が伝わってくる。
「…まあ、それは素晴らしいわ。
…ご返事は…いただいたの?」
「いいえ、まだです」
「…そう。…でも、大丈夫よ。
貴方のプロポーズを断る方なんて、いらっしゃらないわ。
だって、柊司さんはとても素敵なひとだもの。
…誰だって貴方を好きになるわ…」
独り言のような言葉が響いた…。
…母様…!
思わず叫びそうになる自分を必死で抑える。
無言でスマートフォンを握りしめる柊司の鼓膜に、優しい…しかし胸が掴まれるような寂しげな微笑み混じりの声が伝わった。
「…本当におめでとう。心から嬉しいわ。
…柊司さん。いつか、そのお嬢様をご紹介してね。
私の大切な息子をどうぞよろしくとお願いしたいから…」

…そうして電話は静かに切れたのだった。



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