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フリマアプリの恋人
第5章 チャイナローズの躊躇い
店の前の石段を降り、ゆっくりと漁港へと向かう。
…小さな漁港ながら、沢山の漁船が停泊している。
磯の香りが強くなる。

防波堤の上、網の手入れをしている漁師の一人が煙草を吹かしながら海を眺めていた。
立ち止まり、見つめると男が振り返った。

…澄佳の幼馴染の涼太であった。
鋭い眼光で見つめ返される。
「こんにちは。漁はこれから?」
柊司の和かな笑顔を見て、ふんと煙草を長靴で踏みしめる。
「…漁師は早朝4時から仕事してんだよ。もう終いだ」
「そうか…。澄佳さんの店に食べに行かないの?」
「…今日はお袋が弁当作ったから…て、あんたに一々報告する義理はねえだろ」
ぶすっと言い返すところは、意外に純朴さが透けて見える。
「そうだね…。邪魔したね」
…じゃ、また…と行きかける柊司の背中にぶっきらぼうな声が掛かる。
「あんた…。澄佳にプロポーズしたらしいな」
振り返ると、涼太が防波堤の階段を軽々と飛び降りるところだった。
つかつかと柊司に近づき、強い眼差しで真っ直ぐに見据えてきた。
「…ああ、したよ」
「本気なんだろうな。一時の気の迷いじゃねえだろうな」
柊司は表情を引き締めた。
「違う。僕は本気で澄佳さんにプロポーズした。
澄佳さんだから結婚したいと思ったんだ。
彼女と一緒に人生を歩んで行きたい。
…こんな気持ちは初めてだ…。
自分でも信じられないくらいに、澄佳さんに夢中なんだよ」
正直な感情を臆面もなく吐露する。
そんな柊司を涼太は腕組みしながらじっと見守っていた。
「…そうか…」

まだ険しい表情の涼太に、やや困ったように笑いかける。
「…でも澄佳さんからはまだ返事をもらってないんだ。
…彼女は、自分は僕に相応しくない…と言ってね…」
表情を改め、真剣な眼差しで涼太に尋ねる。
「…彼女のかつての恋が枷となっているんじゃないかと思うんだが…君は…知っているのだろう?」
涼太の表情が強張る。
沈黙が流れ、二人の間には防波堤に押し寄せる波の音だけが響いた。



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