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フリマアプリの恋人
第5章 チャイナローズの躊躇い
「…柊司さん…。涼ちゃん…」
背後から心配そうな澄佳の声が聞こえた。
振り返ると、澄佳がエプロン姿のまま佇んでいた。
「…澄佳さん…」

「…お客さん、だいぶ空いたから…て知らせようと思って…」
涼太は澄佳にニッと笑いかけるとすたすたと近づいた。
「…お熱いなあ、お二人さん。
ランチデートか?」
ほっとしたように、澄佳が口を開いた。
「涼ちゃんも食べてく?今日は涼ちゃんの好きなアジフライ定食だよ」
澄佳の頭をぽんぽんと軽く叩く。
その仕草には溢れるような愛おしさがあった。
荒削りだが男らしい褐色の貌が優しく解ける。
「今日はお袋の弁当だ。すげえ大量のドカベンさ。
食わねえと怒るからよ」
…またな…と手を振りかけ…柊司を見遣りにやりと笑った。
「…こいつさ、なかなかいい男じゃん。
…ま、俺に比べりゃ、だいぶひ弱だけどな」

…さいなら、お二人さん。
手をひらひらと振ると涼太は防波堤の上に飛び乗り、そのままふらりと姿を消した。

涼太を見送ると、柊司は微笑みながら澄佳に手を差し出した。
「…行きましょうか、澄佳さん」
「…はい…」
差し出された手を、そっと大事そうに澄佳は握りしめた。
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