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第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜

…銀座の目抜き通りにあるオーガニックハーブの店で澄佳はローストターキーに使うハーブや岩塩を購入した。

片岡は味はもちろん、素材や調味料にも敏感だ。
有機農法のフレッシュハーブが買えて良かった…と思わず微笑みながら店員に見送られ、外に出た。

…外はからりとした冬晴れであった。
華やかな銀座の街並みだ…。
デパートやブランドショップ、高級シティホテルの外観は赤と緑のクリスマスカラーで彩られ、クリスマスイブらしい輝きに満ち溢れていた。

澄佳はウィンドウを見ながらゆっくりと通りを歩いた。
片岡へのクリスマスプレゼントにはすでに用意していた。
宮緒と相談して、片岡が欲しがっていたらしいイタリア製のドライブ用の革手袋だ。
綺麗にラッピングして、マンションのクローゼットに大切にしまってある。

…おばあちゃんに何か送ろうかな…。
1ブロック先のデパートで暖かなセーターでも選ぼうと足取りも軽く歩き始めた時…。
少し先の高級老舗ホテルの車寄せで辺りを制するような威厳に満ちた豪奢な車が静かに停まるのが見えた。

澄佳はふと脚を止め、視線を向けた。

…黒のメルセデス・マイバッハ…
郊外のマンションが簡単に買えてしまうような価格の超高級外車だ。

車好きな片岡の影響で、澄佳も詳しくなったのだ。

思わず見惚れていると、車の運転席のドアがゆっくりと開いた。

…その瞬間、澄佳は眼を見張った。
「…片岡…さん…？」

…その男は、紛れもなく片岡であった。
長身に正装のブラックスーツをりゅうと着こなし、ゆったりと車の前を歩き、助手席側に回る。

…片岡さん…。今、軽井沢にいるはずなのに…なぜ…？

疑問と訳の分からない不安が渦巻く中、思わず近くの街路樹に身を潜めた。

片岡は助手席のドアを開けた。
…と、助手席からラグジュアリーな黒いドレスを身に纏った一人の女性が現れた。
…年の頃は三十歳くらいだろうか…。
貌はよく見えないが、背が高く黒いドレスを着た姿はまるでモデルのようだ。

片岡はその女性に手を差し伸べ、丁重に引き寄せた。

ホテルの入り口からベルボーイが走り寄り、片岡の手から車のキーを預かる。

片岡は黒いドレスの女性を恭しくエスコートしながら、ホテルの重厚な造りの回転扉へと姿を消した。