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フリマアプリの恋人
第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜
…高級老舗ホテルのロビーは広い。
クラシカルな琥珀色のシャンデリアの光のもと、澄佳は片岡の姿を探す。
ロビーの奥、低めの階段を数段上がった先に庭園に面したゆったりとしたコーヒーラウンジがあった。
…そのテーブルのひとつに、片岡と女性…そして同年代の男女が席に着くところだった。
澄佳はそっと気配を消し、他の客たちに紛れて片岡たちのテーブルの後ろのソファ席に背中合わせに座った。
…幸い、片岡たちのテーブルの背後には大きな観葉植物があり、澄佳の姿をすっぽりと隠してくれた。
ラウンジの奥にはグランドピアノがあり、ドレスを着たピアニストが優雅にグレンミラーのムーンライトセレナーデを奏でていた。
僅か1メートル離れたところには片岡がいる…。
澄佳の心臓は破裂しそうなほどに激しく鼓動を刻む。
白いブラウスに黒いスカートを身に付けたウェイトレスが慇懃にオーダーを取りに来た。
「…ホットコーヒーをお願いします…」
声が片岡に届かぬように小声で囁く。
「かしこまりました」
ウェイトレスは澄佳を不審に思う様子もなく、恭しくお辞儀をして去って行った。
澄佳は自分の服を見下ろす。
…ベージュのコートにオフホワイトのカシミアのセーター、ブリティッシュグリーンのタータンチェックのロングスカート、焦げ茶色のショートブーツ…。
…上質なものだが外出着とは言えない。
買い物だけのつもりだったので、軽装で来てしまった…。
ラウンジの煌びやかな服装や着物姿の人々の中、明らかに浮いているに違いない。
惨めさに拍車が掛かる。
…そんな関係のないことをぼんやり考えていると、背後のテーブルから話し声が聞こえ始めた。
…澄佳は身を縮めて耳を澄ませた。
クラシカルな琥珀色のシャンデリアの光のもと、澄佳は片岡の姿を探す。
ロビーの奥、低めの階段を数段上がった先に庭園に面したゆったりとしたコーヒーラウンジがあった。
…そのテーブルのひとつに、片岡と女性…そして同年代の男女が席に着くところだった。
澄佳はそっと気配を消し、他の客たちに紛れて片岡たちのテーブルの後ろのソファ席に背中合わせに座った。
…幸い、片岡たちのテーブルの背後には大きな観葉植物があり、澄佳の姿をすっぽりと隠してくれた。
ラウンジの奥にはグランドピアノがあり、ドレスを着たピアニストが優雅にグレンミラーのムーンライトセレナーデを奏でていた。
僅か1メートル離れたところには片岡がいる…。
澄佳の心臓は破裂しそうなほどに激しく鼓動を刻む。
白いブラウスに黒いスカートを身に付けたウェイトレスが慇懃にオーダーを取りに来た。
「…ホットコーヒーをお願いします…」
声が片岡に届かぬように小声で囁く。
「かしこまりました」
ウェイトレスは澄佳を不審に思う様子もなく、恭しくお辞儀をして去って行った。
澄佳は自分の服を見下ろす。
…ベージュのコートにオフホワイトのカシミアのセーター、ブリティッシュグリーンのタータンチェックのロングスカート、焦げ茶色のショートブーツ…。
…上質なものだが外出着とは言えない。
買い物だけのつもりだったので、軽装で来てしまった…。
ラウンジの煌びやかな服装や着物姿の人々の中、明らかに浮いているに違いない。
惨めさに拍車が掛かる。
…そんな関係のないことをぼんやり考えていると、背後のテーブルから話し声が聞こえ始めた。
…澄佳は身を縮めて耳を澄ませた。