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フリマアプリの恋人
第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜
「…初めまして…ではないわね。
私は貴女を何回も見ているわ。
…貴女はご存知ではないでしょうけれどね」
部屋に入るなり、片岡の妻…麻季子は愉しげに笑った。
それはまるでパーティ会場を訪れた華やかな女性の陽気さのようで…澄佳を強張らせた。
麻季子は勝手知ったる我が家のように廊下を通り抜けリビングに迷うことなく進んだ。
「…あの…奥様…」
澄佳は慌てて追いかける。
…麻季子はリビングの作り付けの飾り棚に置かれた写真立てに手を伸ばしていた。
写真は一昨年、二人で中国の蘇州を旅した際に映したものだ。
…「…蘇州は東洋のベニスと言ってね。
水の都なんだよ。
しっとりとした情緒がある…どこか懐かしく儚げな美しい町だ。
…君に相応しいと思ってね…」
片岡はそう言って、運河の町で澄佳の写真をたくさん撮った。
真紅のチャイナドレスをオーダーし澄佳に着させた。
…そうして宿泊したガーデンホテル蘇州のスイートルームで濃密に愛し合った…。
新品のチャイナドレスは、直ぐにだめになってしまった…。
「…ふうん…。
捨てられたのにまだあの人の写真を飾っているわけ?
健気というか、お馬鹿さんというか…」
…いいえ…と冷たく言い捨て、麻季子は容赦なく写真立てを壁に投げつけた。
激しい音を立てて、写真立てが粉々に砕け散り、中の写真が弱々しく床に舞い落ちた。
「…したたかなのよ、貴女は」
私は貴女を何回も見ているわ。
…貴女はご存知ではないでしょうけれどね」
部屋に入るなり、片岡の妻…麻季子は愉しげに笑った。
それはまるでパーティ会場を訪れた華やかな女性の陽気さのようで…澄佳を強張らせた。
麻季子は勝手知ったる我が家のように廊下を通り抜けリビングに迷うことなく進んだ。
「…あの…奥様…」
澄佳は慌てて追いかける。
…麻季子はリビングの作り付けの飾り棚に置かれた写真立てに手を伸ばしていた。
写真は一昨年、二人で中国の蘇州を旅した際に映したものだ。
…「…蘇州は東洋のベニスと言ってね。
水の都なんだよ。
しっとりとした情緒がある…どこか懐かしく儚げな美しい町だ。
…君に相応しいと思ってね…」
片岡はそう言って、運河の町で澄佳の写真をたくさん撮った。
真紅のチャイナドレスをオーダーし澄佳に着させた。
…そうして宿泊したガーデンホテル蘇州のスイートルームで濃密に愛し合った…。
新品のチャイナドレスは、直ぐにだめになってしまった…。
「…ふうん…。
捨てられたのにまだあの人の写真を飾っているわけ?
健気というか、お馬鹿さんというか…」
…いいえ…と冷たく言い捨て、麻季子は容赦なく写真立てを壁に投げつけた。
激しい音を立てて、写真立てが粉々に砕け散り、中の写真が弱々しく床に舞い落ちた。
「…したたかなのよ、貴女は」