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フリマアプリの恋人
第2章 鈴蘭のささやき
「…あ、そうだ」

講義を終え、柊司は学生達が騒めきながら階段教室から退出するのを横目に、ジャケットの胸ポケットからスマートフォンを取り出した。
素早く電源を入れる。

「…!」
フリマアプリからメールが届いていた。
澄佳の出品だ。
「しまった!出品されていたのか」
慌てて出品ページにアクセスをする。
…が、もちろんそこには赤い斜線で、SOLDOUTと書かれた文字が踊っているだけだった。

見ると、メールが着いた1分後に売り切れている。

柊司は落胆のため息を吐いた。
「…残念…」
…商品は瑠璃子がずっと欲しがっている鈴蘭のイヤリングだった。
繊細なガラス細工の鈴蘭に金の細い真鍮があしらわれ、可愛らしくも少し大人っぽいデザインだ。

まだひとつも商品を買えていないことに改めて不甲斐なく感じる。

「…意外に難しいものなんだなあ…」
独りごちる柊司に
「何凹んでんの?清たん!
…あ、スマホ!何見てんの?誰?恋人?きゃー!清たん、やっぱ恋人いたの⁈」
柊司の授業を履修している学生のひとりが肩越しにスマートフォンを覗き込んでいた。
「こら、勝手に覗くんじゃないよ」
さっと胸ポケットに仕舞い、窘める。

「益々怪しい!清たん、秘密の恋人ができたの?
…もしかして不倫〜⁈
きゃ〜!危険よ、危険!」
諌められても少しも気にせずひとり悶えるのは、柊司が主宰する英文学の研究ゼミ生の岡田瞳だ。
明るく屈託がない性格は良いのだが、とにかく賑やかでよく喋る。
柊司の大ファンらしいが、その騒ぎ方が派手で柊司はいつも宥めるのに苦労しているのだ。

手にした資料ファイルで頭を叩く真似をする。
「馬鹿なことを言うんじゃないよ。
…あ、岡田くん。君まだレポート提出されてないからね。来週月曜日、正午期限。1分でも遅れたら受付けないから」
「ぎゃ〜!い、痛いとこを…清たん!見逃して〜!あたしのお色気で〜!」
「見逃せるか。…あ、そうだ」
柊司はふと彼女に質問してみた。
「君、フリマアプリとかやってる?
ちょっとコツを聞きたいんだけど…」
岡田瞳はきょとんとした貌をし、盛大に騒ぎ出した。
「み、みんな聞いて〜!M大の王子様がメリマやってるって〜!事件だよ、事件〜!」
残っていた学生たちがざわざわと興味深げに集まりだし、柊司は彼女に尋ねたことを激しく後悔したのだった。




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