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フリマアプリの恋人
第1章 prologue
「柊ちゃん!やっと来てくれた!」
病室のドアから貌を覗かせるなり、瑠璃子は瞳を輝かせベッドから飛び降りた。

子犬のように飛び付いてくる妹を柔らかく抱きとめ、貌を覗き込む。
「元気そうだね。安心したよ」
「元気だよ。だって、身体の病気じゃないもん」
屈託無く笑う瑠璃子の表情はとても明るい。
入院する以前とは別人のように生き生きとしている。

…良かった…。
やはり、思い切って入院させて正解だったな…。
柊司は密かに胸をなでおろす。

「柊ちゃん、お土産は?お土産!」
柊司の手元を探すようにくるくる回り出す瑠璃子の頭を軽く小突く真似をする。
「こら、お行儀が悪いぞ」
「だって!柊ちゃんのお土産、いつも美味しいんだもん!」
その無邪気な様子に流行りのショップのペーパーバッグを差し出す。
ペーパーバッグのロゴだけ見て直ぐに瑠璃子は大きな瞳を輝かせた。
「ゴンチャだ!ゴンチャのタピオカ⁈」
「30分並んで買ったんだぞ。若い女の子に囲まれて。
超恥ずかしかった」
瑠璃子はガサガサとペーパーバッグからタピオカ入りのドリンクカップを取り出し、可笑しそうに笑った。
「柊ちゃんも、超なんて言うんだね」
「周りで散々聞かされているからな。
清瀧センセーの授業、超ムズカシー!レポート、超キビシー!…なんなんだよ、あれ」
弾けるように瑠璃子が笑う。
「柊ちゃんのモノマネ超キモい!」

その笑顔を見て、しみじみ思う。
…この笑顔が失われる前に気づけて良かった…と。



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