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フリマアプリの恋人
第1章 prologue
瑠璃子はまだ六歳で小学校に入学したばかりであった。
柊司は二十四歳…修士課程を終え、博士課程に進んでいた。
柊司はアメリカに飛んだ。
セスナ機はロッキー山脈の奥深くに墜落し、遺体はとうとう見つからなかった。
すべての手続きを終え、大学の研究室に残された父の遺品を引き上げ、帰国した。
自宅で柊司を出迎えた由貴子は、雪の女王のように青白い貌をしていたが、涙は見せなかった。
由貴子の傍らには常に瑠璃子がいたからだ。

瑠璃子を家政婦に委ね、由貴子と柊司は父親の書斎に入った。
並べられた遺品の数々を愛おしげに手に取り、深くため息を吐いた。
泣くのを堪えるかのように、長い睫毛を瞬かせた。
「…瑠璃子はお父様が亡くなったことに薄々勘付いているの。
神経が過敏な子だから、まだ真実は知らせたくないの。
事故で亡くなったなんて…。
…だから私が泣く訳にはいかないわ」

形の良い唇に無理やり微笑みを乗せた由貴子を、思わず柊司は抱き締めた。
柊司の腕の中で、か細い身体がびくりと震えた。
胸の中に閉じ込めるように強く抱き締める。
…切ないような密やかな花の薫りが鼻先を掠めた。
「…何でも言って、母様。僕が出来ることは何でもする。
母様と瑠璃子は僕が守る。父様と約束したんだ。
…それに…僕は…僕は母様が…!」
柊司の腕の中で由貴子が貌を上げた。
甘い吐息が触れ合いそうなほどの距離で眼が合う。
由貴子の潤んだ黒い瞳が、柊司を見つめる。
弾かれたように、腕を解く。
しどろもどろの言い訳をする。
「ごめん…。僕は…母様を…元気付けたくて…」
由貴子が首を振る。
掠れた声が柊司を赦す。
「いいのよ、ありがとう…。
柊司さんの優しさは良く分かっているから…」


「ママ!どこ?ママ!早く来て!ママ!」
奥の部屋で、瑠璃子の泣きじゃくる声が聞こえた。
父親が亡くなってから、瑠璃子は母親から片時も離れられなくなっていた。

「今行くわ、瑠璃ちゃん…」
扉の向こうに声をかけ、柊司を振り返る。
「…今日のことは…忘れましょう。
これからも柊司さんは私の大切な…可愛い息子よ…」
儚い…哀しげな微笑みを見せ、由貴子は扉の向こうに消えた。







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