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フリマアプリの恋人
第1章 prologue
生まれてきた妹…瑠璃子を柊司は可愛がった。
父親も五十過ぎて授かった初めての女の子を大層喜び慈しんだが、相変わらず研究に多忙な日々を送っていた。
長年研究している大掛かりな実験に、実用化の目処が立ったこともあり、週に1日も帰宅できない父親に代わり、柊司が様々なことを手伝った。
自宅が古く広大な為に、昔馴染みの家政婦はいたが、それでも手が足りないことはたくさんある。

由貴子は、柊司の受験勉強の妨げになるのでは、と気にしたが
「瑠璃子の面倒を見るくらいで落ちるなら、僕に実力がなかった…てことだよ。
心配しないで」
そう声をかけた。

本当に瑠璃子が愛おしく可愛かったからだ。

穏やかで温かく…日増しに賑やかになる生活が始まった。
柊司は大学生になり忙しくも充実した日々を送っていた。
父親は海外の権威ある大学の研究チームに参加することになり、単身アメリカに渡った。
可愛い盛りの瑠璃子と離れるのを寂しがったが、自分の研究が花開くまたとないチャンスを研究者としては逃す訳にはいかなかったのだ。

父親は年に数回は必ず帰国した。
瑠璃子の誕生日、夏休み、正月休みだ。
その都度、可愛らしく成長した瑠璃子に目を細め、立派に成人した柊司を頼もしげに見つめた。

…そうして数年が過ぎ、柊司は大学院生になっていた。
父親がアメリカに戻る前夜、久々に親子で酒を酌み交わした。

普段、寡黙な父親が珍しく饒舌に語りかけた。
「…柊司には済まないことをしたな。
私が研究にかまけて、幼いお前に時間を割いてやることができなかった。たくさん寂しい思いをさせたと思う。
けれど、お前は不満も漏らさず、真っ直ぐに成長してくれた。
…感謝しているよ」

…そして、こう言って頭を下げた。
「まだしばらく私は日本には帰国できない。
瑠璃子はまだ小さい。
…万が一、私に何かあったら、由貴子と瑠璃子を頼む。
お前が二人を守ってやってくれ」
柊司はすぐさま
「やめてください。そんな…縁起でもない」
…けれど…と、父親の眼をじっと見つめて答えた。
「母様と瑠璃子は僕の大切な家族です。
父様の留守中は、僕が二人を守ります」

父親は本当に嬉しそうに安堵を滲ませ、笑った。

…父親がアメリカで乗り継ぎのセスナ機に搭乗し、墜落事故に巻き込まれ亡くなったとの緊急の報が外務省から入ったのは、その翌々日のことであった。




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