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夢見の国
第3章 巫女姫
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二人居ると思っていたその部屋に居るのは、ひとりだけだった。

もう一人は帰ってしまったようだ。


そこにひとり残っている人物を見つめる。

大きくて広い机に軽く腰掛け、長い脚を足首のあたりで組み、両手も胸の前で組んでいる。

力んでも居ないのに、逞しい二の腕が筋肉で盛り上がっていた。

全身からみなぎる、男の力強さのようなものを感じる。

それは、戦う者が纏うもののような気がした。


息をつめて見惚れるあたしに気付かないのか、大き過ぎる窓に顔を向けたまま身じろぎもしないその男の名を、心の中で呟く。


(…ラーストさん)


あの淫らな夢の中で、あたしを犯した男だ。

そう言えば、と自分の身体を見下ろす。

夢の中では素っ裸にさせられたけれど、誰がそうしてくれたのか、あたしはちゃんと服を着ていた。

くるぶしまで届くほどに長い、薄手の真っ白なワンピース。

シンプルな造りだけど、動くたびにふわりふわりと、長いスカートの裾と、長袖の開いた袖が揺れる。

まるでお姫様になったかのような気分を味わった。

開き過ぎと思うほどに肩が出たデザインは少し寒く感じるが…。


鏡で確認したわけではないけれど、


(…凄く可愛い、気がする)


何となくラーストが用意してくれた気がして、思わず口元が緩んだ。
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