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歳下の悪魔
第1章  後悔


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


「優華先輩。おはようございます!」
 和真に声をかけられ、ドキリとしてしまう。
「お、おはよう……」
「優華、オッハヨ―。金曜日、大丈夫だったー? 和真くんに送ってもらったんだから、安心かー」
 美月が笑っている。
 安心どころじゃない。土曜日は何もせずに帰り、日曜に彼は来なかった。でも、私の不安は募るばかり。こんなこと、美月にも相談出来ない。
 他のみんなに金曜のことを謝ってから、ロッカールームへ行った。
 気を張っていないと、涙が出そうになる。
 ロッカーにバッグを入れ、白衣を着てから自分のデスクへ向かう。
「優華先輩。確認、お願いします」
 和真は書類を差し出すと、そのまま自分のデスクへ戻って行った。書類の端に、付箋が貼ってある。
 “今晩行く”。付箋にはそれだけ。
 急いで付箋を取り、丸めてゴミ箱へ入れた。
 今晩は、ドアを開けなければいい。部屋も暗くして、いない振りをするのが一番。スマホの電源も切って。
 明日謝ればいい。急用が出来て、出掛けていたと。
 仕事をしているうちに、段々集中出来るようになってくる。昼は珍しく、私から美月と敦子さんを外でのランチへ誘った。
 出来るだけ和真から離れていたい。顔を見ると、スマホにあった全裸の写真を思い出してしまう。


 残業したい時に限って、仕事は定時で終わってしまった。和真の存在を忘れようと思い、余計に集中していたせいもある。
 帰宅するしかない。
 足取りも重く家に帰り、電気を点けないまま部屋着に着替えた。膝を抱えてベッドに座り、そのままじっとしている。
 食欲はない。
 今晩は、このまま和真を遣り過ごすしかないだろう。
 カシャリという音。
 心臓が跳ねた。
「真っ暗にして、何してるの? 電気点けるよ?」
 和真の声がした後、部屋が急に明るくなる。その眩しさに、暗闇に慣れた目を瞑った。
「どう、して……?」
「鍵のこと? 金曜に預かった時、合鍵作っといたから」
 合鍵まで持たれているなんて、もう逃げ場はない。多分引っ越しても、合鍵を要求されるだろう。
 渡さなければ、また脅される。私は、和真から逃げられない。
 絶望感と恐怖で、頭の中がいっぱいだった。


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