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歳下の悪魔
第9章  告白


「優華には、嫌な話かもしれないけど。高校時代や大学時代の彼女達は……。俺が、跡取りだって知ってて、近付いて来たから……」
 昔の彼女の話も、そう嫌じゃない。この年齢になれば。
「優華は何も知らなくて、愛してるって言ってくれたんだよね……?」
 語尾が弱くなっていくのに気付き、笑顔で頷いた。
「うん」
 私は、和真の私生活は知らない。父親が会社経営をしていることさえ。
「瀬名製薬って、知ってる?」
「理系じゃなくても、みんな知ってるんじゃない? 超大手だし。え……?」
 笑ってから、自分の表情が固まるのに気付いた。
「瀬名、和真……。瀬名!?」
「ああ……」
 言葉が出なくなってしまう。
 瀬名製薬は医薬品会社の大手で、テレビCMもよく観る。
 薬やサプリメントの開発販売では一位かもしれない。
 理系の憧れの会社でもあり、私のいた大学からは、成績のいい数名だけが入社していた。私も一応受けてはみたが、書類審査だけで弾かれた所。
「えっ!? 瀬名、製薬の、御曹、司?」
「姉貴はもう結婚してるから、跡を継ぐ気はないって。文系だし。残りは俺だけだから、理系を出た。経営学も取ってたし」
 こんな高級マンションも、高級車も。全てそのせいなんだろう。以前スーパーに行った時、やたら高い肉を買った。私は特売品にしようと思ったのに。
 そんなに生活レベルが違って、付いて行かれるだろうかと、逆に不安になってしまう。
「だから。知ってて近付かれるのが嫌で。でも、優華を放したくなくて……。だから、奴隷とか、言ってたのもあるから……」
 何だかおかしくなって、笑い出してしまった。
 やはり、過激すぎる小学生のよう。
「何?」
「ううん。可愛いなぁ、と思って」
「歳上だからって……」
 ふてくされたような顔が、また可愛い。
「今日の、階段での件だけど。あの人、瀬名製薬から転職してきたんだって。その理由を聞きたくて。待遇が悪かったのか、とか。やっぱり、気になって……」
 次期経営者とすれば、気になるだろう。
「跡取りって知られたくないから、普通に呑みに行って、何となく訊こうと思ったから……。優華も来てもいいんだよ? 彼女として」



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