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歳下の悪魔
第1章  後悔


 愛美は27歳。私が、捨てられた彼と付き合い出した年齢とそう変わらない。彼はいるそうだ。
 こうやって食品を運んでくるうちに、仲良くなった。
「毎回、いい匂いですねー」
 ワゴンに近寄って行ったのは、和真。
「和真くん。食べちゃ駄目よ。これから分析するんだから」
 笑いながらの敦子に、窘められている。
「優華さんは大変だから、僕がやりますよ。和真くん、覚えるために手伝って」
「はい。分かりました」
 守に言われ、和真は真面目に返事をしていた。
 会社では、本当に好青年。いっそ全てを話して、会社を辞めようかとも思った。今までの経験と知識があれば、転職先もあるだろう。
 でも、そんな勇気はない。
 それに会社や家が変わっても、和真に見つけられそうな気がする。恐怖から、そんな考えが浮かぶ。
「大丈夫。半分やるから」
 仕事を任せるのが悪いと思い、つい言ってしまった。
「本当に大丈夫ですか? じゃあ……。半分を頼みます。つらくなったら、途中でも言ってください」
 守が、すまなそうに言う。
「和真くんは、優華さんに指導してもらった方が、勉強になると思うよ。手伝ってあげてくれる?」
「はい」
 守なりの先輩への気遣いに、和真が大きく頷く。普通なら嬉しいが、今は普通じゃない。
「優華先輩、よろしくお願いします」
 和真に言われ、軽く頷いた。
 色々な数値を調べるための機械は、二種類が2つずつある。社としては、奮発してくれたのだろう。結構高価な機器だ。
「まず、手袋をして。ここに食品を入れて、この機械で混ぜて」
 和真の前に、粉砕機のボウルとスプーンを出す。手袋は、機械の間に置いてある。
 今までも和真は作業を見ていたが、一人前になるには、実際にやらせた方がいいだろうと思った。
「何か、勿体ないですね」
「これは、サンプルだから」
 勿論食べ物だと認識しているが、私達にとってはただのサンプル。最後には、廃棄する。そんなことには充分慣れた。
「わー。勿体ないなー。美味そうなのに」
 言いながらも、和真はカツカレーを皿からボウルに入れる。


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