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歳下の悪魔
第1章  後悔


「じゃあ、混ざったら呼んで? ブザーが鳴るのは、知ってるよね?」
「はい」
 そう言って、私はデスクへ戻った。
 カツカレーなんて、混ぜるのに時間がかかる。カツまで、滑らかに潰さなければならない。それを知っていて、カツカレーを選ぶのを止めなかった。ピラフなら、一分ほどだろう。
 この間だけでも、和真と離れていられる。仕事に関しては真面目らしく、和真は機械の小窓から中を覘いていた。
 それだけ見て、パソコンへ向かう。昨日のデータを見返し、プリントアウトしたものにチェックを付けていく。
 メニューに書いてあるのは、カロリーと塩分。最近は、糖質も加わった。それらを気にして呑む人達が、どれくらいいるんだろう。
 焼酎などの蒸留酒には、糖質が殆ど無い。問題はそれらを割る物。女性にはカクテルが人気だから、いくらつまみで糖質を抑えても、割るためのジュースなどの糖質の方が高い。
 世の中健康志向といっても、私達の出したデータを見ている人は、どれくらいいるんだろう。
 そう思うと空しい気もするが、これは会社から与えられた仕事。きちんと熟していくしかない。
 暫くしてピーという音が聞え、和真のいる機会の方へ行った。
「混ぜるのは、これで終わり。後は、分析ね」
「はい」
「中から取り出して、このスプーン一杯ずつ、試験管に入れて。16本必要だから」
 和真に専用のスプーンを渡し、次の機械の蓋を開ける。
「試験管に入れたら、端から差していって。その間に、次の食品を潰して。出来たら呼んで」
 またデスクへ戻った。
 出来るだけ和真の傍にいたくない。
 私は昨日、彼の前でイってしまった。それも縄で縛られ、言葉で責められて。
 本当は、顔も合わせたくない。
 今日は休もうかとも考えたが、課のメンバーに、迷惑がかかる。ただでさえ人数が少ないから、課長は上層部に補充を頼んでいた。
 それなのに入ってきたのは、和真1人。
 特殊な仕事だから、一人前になるまで一年以上はかかる。私と美月だってそうだった。


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