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歳下の悪魔
第1章 後悔
美月が、隣や向かいのデスクにまで話をしている。
私と和真が唖然としている中、美月は課長にまで話を通してしまった。
課長は自分が参加すると場が硬くなるだろうと、一万円をくれて不参加。和真を含めた6人で、うちとは違うチェーン店の居酒屋に行くことになった。それも美月が幹事となり、予約を取ってくれる。
「俺のために、すいません。ありがとうございます!」
和真だって理系なのに、体育会系のように大声で頭を下げた。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
今日は課長の計らいで、珍しく定時で終わり。残っている仕事で月曜は大変になるが、誰も口にしない。
みんなで電車を使って居酒屋へ着くと、予約した個室へ案内された。
個室と言っても襖で仕切られ、隣の大声が漏れてくる。隣も、新人歓迎会らしい。掘りごたつ式で、正座しなくてもいいのは楽だった。
和真が入って男女3対3になったから、傍目には合コンのよう。
敦子(あつこ)は36歳でも、結婚して8年。小学生の子供がいる。男性は、42歳の太田(おおた)が既婚者。26歳の守(まもる)は未婚。
比較的新しくて特殊な部署だから、毎年新人が入ってくるわけじゃない。発足当時も、事務職などから集められたそうだ。
何となく男女向かい合って座り、本当に合コンのよう。
「私、マンゴーサワ―。みんなはー?」
メニューを見て言った美月が、食べ物も選んでいる。注文はタッチパネル式で、美月が近い位置に座っていた。私はその隣。他のみんなもそれぞれの飲み物を言い、美月が注文していく。
「お腹に溜まる物と、つまみになる物、テキトーに頼んどくねー」
異論は無い。こういう時はいつも美月が仕切ってくれて、みんなありがたいと思っている。
理系は大体、協調性とリーダーシップに乏しい。それは、私の勝手な思いかもしれないけど。
研究はグループで行うとしても、自分が担当したことに没頭する。そういった大学時代を送ってきたせい。
でもこのメンバーでなら、話も弾むようになった。長いこと一緒にいるし、大学時代とは違う。
「和真くん、挨拶してー」
飲み物が揃うと、美月が煽る。他のみんなも笑顔で拍手をするから、和真が照れながらも立ち上がった。