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歳下の悪魔
第2章 天使と悪魔

「濡れてきちゃった?」
和真が笑っている。その声は会社でのものとも、美月と話していた時とも違った。
「美月さんが戻ってきたら、トイレで、ブラジャー外してきて」
私は一瞬、呆然とした。
「それは……」
今日は白いブラウス。胸の辺りに少し飾りはあるから透けなくても、歩いた時に揺れてしまう。美月にも、変に思われる。
その理由を話すと、和真は溜息をついてから諦めてくれたようだった。
何故私は、彼の言うことを聞いてしまうのだろう。
見知らぬオシオキが怖いのと、最初に取られた写真のせい。和真に、自分を乗っ取られたようだ。
「もういいよ。脚も戻して」
座り直した直後、ふすまが開いた。
「たっだいまー。頼んどいてくれたー?」
「ごめん。何だったっけ?」
「もうー。自分で頼むからいいよー」
元の位置に座り、美月はすぐにタッチパネルを使っている。
和真は美月が戻って来た途端、会社での好青年。その変わりようにも驚いた。
「優華先輩、全然呑んでないですよね」
「そうだ優華―、呑めー。週末だよー」
そう言い出すのは、美月が酔ってきた証拠。
確かに歓迎会では酔うくらいに呑んでいたが、それが初めてのお酒での失敗になるなんて。それも相手は、悪魔のような和真。まだ、二度と会わない知らない人の方がマシだった。
「優華―。次は何呑むー?」
美月が、酒の紙メニューを差し出してくる。
「同じでいいから、頼んで」
仕方なくそう言い、氷が解けて殆ど水になったグラスを空けた。
「はーい」
美月はやたらと楽しそう。それが羨ましい。
私だって以前の週末は、楽しく呑めていた。
それは、ずっと前。
彼と別れる前。
転勤が決まった時点では、プロポーズを待っていたから。
もしかしたら、誰も悪くないのかもしれない。私も元彼も。転勤が後数年先だったなら、結婚出来ていたのかもしれない。
「優華先輩? どうしたんですか?」
考え込んでしまった私に、和真が問いかける。
「ううん。何でもない……」
「優華はー、深―く傷付いてるんだからー。全部忘れて、楽しく呑もー」

