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歳下の悪魔
第1章  後悔


「ん。ありがとう……」
「ねぇ、優華―。コソコソ話してないでー、ワイン呑もうよー。ボトルで頼もー?」
「あっ、赤なら私も呑むわよ」
 敦子がみんなと話しながらも、美月に言っている。結局付き合わされることになり、女性3人は赤ワインで乾杯し直した。
「もっと呑みなってばー」
 美月が、私のグラスに並々とワインを注ぐ。こんな場所では、マナーも関係ない。
 色々な話が進み、和真もこの雰囲気に慣れてきたようだ。太田や守と、楽しそうに話している。
「ほらー、優華―、呑みなってばー」
 こうなると、美月はしつこい。明日明後日は休みだし、特に予定もない。彼と別れてからは、休みに予定などなくなった。
 お互い、土日祝日が休み。だから、予定を入れないようにしていた。でももう、その必要もない。
 26歳からの貴重な時期を、彼に捧げたのに。振るなら、一年くらいで振って欲しかった。
 私は、彼の転勤先に付いて行くつもりだったのに。急ぐなら、結婚式なんていらない。籍を入れて、彼の妻になりたかった。なるものだと、信じて付き合っていたのに。
 32歳になって突然別れるなんて、夢にも思っていなかった。
 よく、30歳になれば吹っ切れると聞くけど、全くそう思えない。
 彼のことを考えると腹が立ち、零さないようにしてワインを一気に呑んだ。
 すぐに、美月がワインを注いでくる。
 それも一気に呑み干すと、少しクラクラして来た。
 知り合いだけの飲み会なんだから、たまには酔っても構わない。
 悪いのは全部あの男。32歳になった女性を見捨てるなんて。
 男性なら、40代になってもそれなりに格好いい。でも32歳恋人なしの私は、これからどうすればいいんだろう。
 彼がいれば、結婚が30代半ばになっても構わない。今の私の未来は、全くの無。何も見えてこない。新しい彼を作るとしたって、相手も若い女性の方がいいだろう。26歳だった私を返して欲しい。
 私の夢は、小さな頃からお嫁さん。仕事は続けてもいいが、家庭優先にしたかった。
 そんな夢が、突然壊されるなんて。
 注がれるままに、ワインを呑みながら考える。
 赤ワインは少し苦い。居酒屋に置いてあるものなら、原価は千円もしないだろう。


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