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歳下の悪魔
第1章 後悔
でももう、味も分からなくなっていった。私は元々、グルメでも何でもない。
チェーン店の居酒屋や焼き鳥屋。そんな場所でのデートにも、全く不満はなかった。記念日などに行くフレンチの方が、緊張してしまう。
月に何日かは、私の部屋での夕食。お蔭で、残ったのは料理の腕前だけ。
高級ブランド物が好きなわけでもなく、数千円のネックレスでも彼からもらうなら嬉しい。
そんな風に、いつも楽しく過ごしてきたのに。
美月が頼んだらしく、新しいワインボトルが来る。
気が付くと、私のグラスはいつもワインでいっぱい。
「敦子さんは、どうやって、今のご主人と、結婚、出来たんですか?」
自分でも、呂律(ろれつ)が怪しいのが分かる。
「優華ちゃん大丈夫? 珍しいわね、そんなに酔うなんて」
「大丈夫です。でも、大丈夫じゃないです。はぁ……」
「結婚は、何て言うのかな……。ある程度ノリだから。優華ちゃんは可愛いから大丈夫よ」
敦子だって、慰めるのに困るだろう。
「美月は? 今の彼と結婚したいと、思わないの?」
「んー。私は、今のカレシと、まだ一年だからー。もう少し、様子を見たいなー」
その間に逃げられたら、と思ったが、口にはしなかった。
20代で結婚するのが、夢だったのに。可愛らしいウエディングドレスを着て、ヴァージンロードを歩く。
プロポーズを待っているうちに、年数だけが経っていった。
7年間は長い。彼の好みなら、全て知っている。料理だって、練習のために自炊していた。彼のために、生きているようなものだったのに。
私はワインを飲み干してから、テーブルに俯せる。
「優―華ぁー。コラー、寝るなー」
そんな声も、段々と遠くなっていった。
「優華ちゃんは、俺が送って行くから」
ハイヒールも履けないまま手に持ち、私は太田に寄り掛かる。
「優華ちゃん? 大丈夫?」
敦子も心配してくれていた。
こんなに呑んだのは、彼と別れた直後に、1人切りの部屋以来。
太田が、私の住所をスマホのアドレス帳で確認しているようだ。太田は、食開二の全員の住所や電話番号などを控えている。特に一人暮らしの者に、何かあった時のため。
「あっ、そこなら、俺の通り道です」
和真の声が聞こえた。