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歳下の悪魔
第5章 事件と有休
「どうした? 2人とも」
部長も立ち上がり、私と守を見る。
「O-157が、検出されました」
「僕もです」
O-157は、殆どが土から付着する細菌。
集団食中毒が、たまにニュースでも流れている。この食材を店舗で出せば、それは免れない。
「カレーからです」
私は突っ立ったまま言った。
「僕は、筑前煮からです」
守も動揺しているのか、言葉が震えている。
太田が立ち上がり、メンバーを見回した。
「私と和真くんで、一課から材料を貰ってくる。敦子ちゃんは、粉砕機の消毒。美月ちゃんと優華ちゃんは、試験管の消毒をしておいてくれ。行くよ、和真くん」
こういった時、現場仕事をしている太田は頼りになる。
試験管はたくさんあり、使った32本を消毒していても問題はない。分析機の隣の大きな鍋に入れたが、30分ほどかかるだろう。その後薬液に漬けるのが、十五分。
その間にシンクで、敦子さんが粉砕機の中釜を洗っている。
中釜もいくつかあるから、分析に支障はない。
「仕入れ先を、安い所に替えたそうだよ」
太田と和真が、戻って来た。
スーパーで使うような2つのカゴには、一種類ずつビニール袋に入れられた、たくさんの種類の食材が入っている。今一課にある物全てだろう。
「もう粉砕出来ます」
「分析もー、大丈夫ですー」
敦子と美月が言うと、すぐに粉砕が始まる。
そうはいっても、粉砕機と分析機は二台だけ。会社がもう少し増やしてくれたらと、思ってしまう。
「このままじゃ、手袋が足りなくなるわね。ストックも少ないみたい」
もう粉砕を始めている敦子が、下の棚を開けている。
「物品部から、貰ってきます」
私は、すぐにドアへ行った。
「じゃあ、和真くんも行ってくれるかな。覚えるためにも」
太田に言われ、和真は「はい」と頷いただけ。
和真と2人になるのは嫌でも、今はそんなことを言っている場合じゃない。
袋から食品を取り出すだけで一組。そこで手袋を変え、粉砕、分析とまた変えていく。1つの食材につき、三組の手袋が必要になってしまう。
「後は落ち着いて、残ってる仕事を片付けよう」
太田の言葉を聞いてから、和真と一緒に外へ出る。