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歳下の悪魔
第5章 事件と有休
二課に戻ってからは大忙し。
少しでも粉砕を速めようと、課長以下みんなで食材を小さく切っていた。
包丁は数があってもまな板が足りず、コピー用紙を重ねた上でやっている。毎回用紙を変えれば、問題はない。
「ただいま。すぐ手伝います」
「俺もっ」
手袋をした手で手袋とマスクの箱を開け、機械の横に何ヶ所か置いた。
「包丁が足りないの。悪いけど、またもらってきてくれる? 後、もう一つのシンクにも、消毒液を張って欲しいんだけど。ごめんね」
敦子が言うと、和真がドアへ走る。
「俺、1人で行けます。美月先輩。消毒液を、お願いします」
「和真くん。人数分かける2ねー。よろしくー」
美月が大根をデスクで切りながら、声をかけた。和真は走って行ったのか、返事はなかった。
私は、消毒液を張り始める。
「何か、お手伝いすることありますか?」
和真と入れ違いに入ってきたのは、一課の愛美。
「消毒液、四ヶ所出来ました。ごめんね、愛美ちゃん。二課じゃないと、分からないことばかりだから」
「粉砕終わりました。分析に入ります。誰か粉砕してください」
守がみんなに聞こえるように言う。
和真が来るまで、粉砕と分析は守の仕事。強要していたわけではないが、新人として自然とそうなっていた。
「試験管も粉砕ケースも、あるのから使って。汚れたのは洗って消毒するから」
悪いが、愛美に構っている時間はない。
「ごめんなさい。失礼します……」
愛美もそれが分かったのか、静かにドアが閉まる。
気持ちはありがたいが、いちいち指示しているより自分達でやった方が早い。彼女には、二課のことは分からないだろう。それに、一課が悪いわけじゃない。
「試験管の消毒、終わりました」
物品部に行っているうちに、誰かが煮沸から消毒液に移してくれたのだろう。タイマーが鳴り、試験管を取り出した。
「手動粉砕終わり―」
美月が、新しい消毒液へ包丁を入れる。
「こっちも終わりよ」
敦子も包丁をシンクに入れると、すぐに新しい手袋をして次の食材を取りに行く。
全て消毒しなければ、どの食材が問題なのか解らない。
「ただいまっ。20本もらってきました!」
駆け込んで来た和真が、自分のデスクに箱を置く。