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歳下の悪魔
第5章  事件と有休


「まず洗浄と消毒をするから、こっち持って来て」
「はい」
 こんな騒ぎは二課が出来て以来初めてだと、課長がボヤいている。確かに、私も美月も初めて。
 小さめでも、シンクは5つある。洗ったり消毒液に漬けたりと、色々あるからだろう。
「和真くん、粉砕やってくれる? その後は、消毒。やり方、覚えたよね? 私は、食材切りの方へ回るから」
「はい。分かりました」
 慣れない課長と守は、食材切りに悪戦苦闘しているようだ。自炊に慣れている私は、包丁使いにも自信がある。それを考えると、私や主婦の敦子なら切るのも早いはず。
「あっ、ゴミ箱」
 見ると、使い終わった手袋で、ゴミ箱がいっぱいになっている。
 私はロッカールームへ行き、空の段ボール箱を持って来た。同じく持って来た大きなゴミ袋をセットし、手袋をして今までのものを捨てる。
 ロッカールームに空き段ボール箱があるのは、一気に物品を取りに行くため。普段なら、月末に足りない物を台車で運んでくる。
 手袋を替え、玉ねぎの入った袋を出した。根菜類は、全て泥付き。新鮮さを保つためにはいいが、それにO-157の菌が付いている可能性が高い。着いていた泥も、そのまま粉砕機に入れる。
 課長が用意してくれた、A3のコピー用紙を重ねた上で玉ねぎを切った。皮を剥けばみじん切りも出来るが、剥いた時に泥が飛び散るからそのまま出来るだけ細かくしていく。
 泥の一粒も、逃してはならない。
 用紙の隅に玉ねぎと書いてから、粉砕機の横に持って行った。
 手袋と包丁を替え、次の食材。
 いくつか切っていると、守が声を上げた。
「データ出ましたけど、どうしますか?」
「まずは、全ての食材のデータを揃えよう」
 課長の言葉に、全員が「はい」と返事をする。
 私は、とにかく食材を切り続けるしかなかった。



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