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歳下の悪魔
第5章  事件と有休


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 全ての食材を切り終えた時点で、22時を回っている。
 昼は交代で取ったが、食事を流し込んだだけ。みんなが頑張っている姿を見ると、休んでもいられない。
 後は、溜まっている切り終えた食材の粉砕と分析。
「取り敢えずー、お疲れー」
 そう言った美月は、まだ消毒を続けている。
「美月、代わるよ」
「平気平気。私は切るより、こっちのが向いてるから」
 美月は笑って言った。
「失礼します。あのー。差し入れなんですけど……」
 一課の愛美が、両手にコンビニの袋を提げている。
 社内の売店は、もう閉まっている時間。わざわざ、外へ買いに行ってくれたのだろう。
「やっと一段落着いたところよ。ありがとう」
 持って来てくれたのは、大量のおにぎり。
「いただきます」
 喰いついたのは、和真と守。袋から、空いているデスクにおにぎりを出した。
「新しい手袋をして、食べるんだぞ」
 課長に言われ、2人は急いで手袋をして食べ始める。
「一課の方は、どうだったの?」
「保管庫の食材と、作った物の廃棄です。その後、取り敢えず大掃除でした」
「ねぇ、優華―、私も食べたいー。シャケー」
 美月の手はふやけている。普段はゴム手袋をするが、今回は毒薬を扱っているようなもの。手も一緒に、消毒していた。
「愛美ちゃん。ありがとう。頂きます」
 シャケのおにぎりを2つ開け、美月に食べさせながら自分も食べる。
「手作りにしようと思ったんですけど。うちの課で作ったら、まだ、食べられないと思って……」
「その、気持ちが嬉しいから。ありがとう……」
 守が、率先して愛美に話し掛けていた。
「やっぱり、O-157ですか?」
「詳しい解析はこれからだけど、多分。カレーと筑前煮のデータに、出てたから。でも、愛美さんが悪いわけじゃないよ」
「怪しくない? 守くん。あんなに女子と話すなんて」
 美月が耳打ちしてくる。
 確かに守は、普段仕事に必要なことしか話さない。不愛想ではなく、口数が少ないだけ。理系には少なくないタイプだ。
「誰か、お茶を入れてくれないか?」
「私がやります。手袋借りますね」
 愛美が手袋をして、サーバーからみんなの分のお茶を淹れる。それをトレーで配って回った。



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