この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
第2章 晦日(つごもり)

「まあ、まだ先の話だけどね、だって雅……」

加賀美はまた堪えきれないように、ぷぷっと笑う。

「まだ、胸ペッタンコにも程があるし」

そう言うと、雅のグレーのセーラー服の襟元を、つんと人差し指でつついた。

その瞬間、雅の瞳と表情から怒りや苛立ちが消え、能面のような表情になった。

荷物をざっと纏めると、加賀美の横をすり抜ける。

「ご機嫌よう」

「えっ……雅……?」

一瞬で表情から感情の一切を削ぎ落としてしまった雅を、加賀美は頭を掻きながら困惑して見送るしかなかった。

雅は早足で図書館から離れる。

もう昼休みが終わる頃だ。

狼狽えないよう顔に出ないように気を引き締め、顎を引き背筋をピンと伸ばす。

「私はこのままでいいの――」

雅は自分に言い聞かせるようそう呟くと、指が白くなるくらいにぎゅっと鞄の持ち手を握り締めた。

(誰に何と思われたっていい。お兄様にずっと愛される為には、今のままの私が必要なの――)                






両親が死んだ頃の記憶はない。

雅はまだ、幼すぎた。

両親について覚えていることといえば、大きくて暖かい手の持ち主だったということくらい――いやそれさえも、写真を見て自分で作り上げた幻想かもしれない。

だから、自分の中で始めから存在しない人達に、哀しみや恋しさはない。

(私達兄妹を鴨志田という檻に置き去りにした人達、ただ、それだけだ――)

鴨志田には本家と分家がある。

本家は長兄血筋の一族で、鴨志田姓を唯一名乗ることが許される。

家長は鴨志田グループの総帥となり、株式会社鴨志田の代表取締役を歴任する。

その事業は多岐に渡り、不動産・建設業、製薬・食品の製造・卸売業を主軸に、金融業等幅広い分野を営んでいる。

一方、分家は長兄の姉弟妹、従兄弟、はとこ達で構成され、宮前姓を名乗る。

ほとんどの者達が鴨志田グループの恩恵を受けその職に就くか、国会議員、警視庁、その他主要官庁に優秀な人材を輩出し、鴨志田の繁栄に影ながら貢献している。

その為、昔から分家の宮前は、本家の鴨志田に頭が上がらない。

宮前の者達は役員会に名を連ねていても鴨志田が絶対で、反旗を翻そうものなら一族から追放されてきた。

また鴨志田が歴代経営手腕に卓越した者が続いてきた為、その存在は絶対的なものとなっていた。

/144ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ