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第6章 幾望(きぼう)

初等部に上がるまで、毎日繰り返された、叔父叔母からの――呪詛。

(お兄様も皆と同じように、私を一族の駒としか見ていないのだろうか――)



『これは鴨志田にとっても、両家を繋げる素晴らしい縁談となる』

『……いい妹だよ、お前は』  



「………………」

(馬鹿な私……昨日のお兄様の言葉が、全てを物語っているではないか。最初から私のことなんて――)

「……私のことなんて……誰も愛してくれていないのね――」

手の中にあると思っていたモノ達が、さらさらと音を立てて掌から零れ落ちていく。

(私の元には何も残らないのだ。

 私には何も無いのだ。

 私は……

 最初から、独りぼっちだ――)

頭の芯が麻痺したように朦朧とする。

エネルギーの不足した体が、これ以上の思考を拒否しているようだった。

(つかれた……ただ疲れた……)

涙は出なかった。

いつか訪れると、脅えてきた『最後の日』。

もう雅の心を揺さぶる感情は、何も残っていなかった。



(お兄様……貴方の人形は、いつまでも貴方を愛しています。

 美しくて、気高くて……

 残酷な貴方を――)



雅は重い身体を引きずるようにベッドからおり、書斎のデスクまで歩いていく。

何とかリクライニングチェアに座ると、首から鍵を取り出し、引き出しを開ける。

クリスタルがキラキラと光を受けて輝く。

雅はその隣の錠剤の詰まった瓶とブランデーを取り出すと、瓶の蓋を開けて中身を半分煽った。

ブランデーの瓶を開け、直接口を付けて喉に薬を流し込む。

こぽり。

琥珀色のブランデーが、瓶の中でゆったりと波打つ。

初めて口にしたブランデーの強いアルコールに何度も咳き込むが、涙を流しながら無理やり喉に流し込んだ。

残り半分の薬も同様に酒で流し込み、酒も何とか全て飲み干した。

(武田先生……献体には申し込めなかったけれど、睡眠薬で死んだら、綺麗な私のままだと喜んでくれるかしら――)

ヤブ医者の妙に整ったにやけ顔を思い出し、雅は死ぬ直前にこんなことを考える自分に嗤い、目を閉じた。

ごぽり。

酒に酔ったのだろうか。

自分の体が、ひたひたと緩慢に満ちてくる生温く粘度の高い闇に、ずるずると沈み込んでいく気がした。

瞼の裏にはいつまでも、キラキラと輝く光が瞬いていた。



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