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泳ぎ疲れた人魚の恋
第1章 1
 身体の中を下っていく白い球は、真珠色の涙みたいだ。
 ピンポン球サイズのそれが動くたびに与えられる刺激は、覚悟していたのよりもずっと強くて、有希也の腰は、ビクッとはねる。
「あ……っ、はッ、うぅ……っ」
 カタン、と小さな音が連続でして、白い球が二つ、シャワールームのタイルに滴った。
「はぁ、はぁ……」
 自らの力でそれを絞り出した有希也は、脱力したように、壁に背をあずけて息を継ぐ。全力で泳いだときよりも苦しい上に、こんなことをしている自分の姿を思い浮かべると、死ぬほど恥ずかしい。
 さっき、客に押し込まれた小さな球は、まだいくつか身体の中に残っている。店のほうで接客していたときは、自分からソファに這って尻をつきだし、「入れてくれよ」とねだったりしていた彼だが、今になってそれを後悔している。蕾の奥の奥まで入ってしまった球は、下腹に力を入れたくらいでは、取り出せなかった。
 先月、入店したばかりのときに店長に教わったように、シャワールームに備えられた浣腸剤を、そっと手に取る。便秘になったことはないので、使った経験はなかった。
「みんなやってるから、すぐ慣れるよ」
 柔和な印象の若い店長は笑っていたけれど、きらびやかで浮き世離れしたホストクラブの裏は、表ほど美しくない世界なのだ。客が金を払って買った、真珠のようなピンポン球を、身体いっぱいに詰めさせた有希也は、自嘲するように笑って、浣腸剤の透明な差し込み口を、そっと自分の蕾に挿した。もう、ここに何かを入れることにすっかり慣れてしまっている。
 来たばかりのころに、先輩ホストから、毎日のように居残り指導を受け、後ろに道具を受け入れることを覚えさせられたのだ。仕事で抱かれた経験はまだないが、客に気にいられて、最後までを求められれば、金で身体を売ることになる。有希也は、まとまった金が必要だったこともあるが、主に、人を傷つけた自分を罰するために、この店に身をおいていた。
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