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純愛ハンター
第9章 裁き9、プリティベイベー
「でも、私…最後の最後にクソ親父を信じちゃったんだよね…こんな性分だから今までの私は人にとことん踊らされて…そんな自分を自分で認められなくて…人を散々傷付けて…」

お嬢は玲子に目線を送ると、

「玲子…今まで本当にゴメンね…そして、本当にありがとう…」

憑き物の落ち切った真っ直ぐな顔でそう言った。
すると玲子は、顔をクシャクシャに歪め………

「何よ、今さら…気持ち悪い!うふふっ!」

まるで親友同士だった学生時代の頃のような屈託のない満面の笑みをお嬢に向けた。

「ねぇ、玲子…これからどうするの?」

お嬢が訊ねると、玲子は事務所の照明を落とした。
大窓から入るかすかな街灯と月明かりだけが、2人を照らした。

「…最後の復讐も無事に済んだ事だし、とりあえず乾杯しましょう!」

玲子がノートパソコンに触れると、スピーカーからは1960年代のものと思われるミドルテンポのゴスペルオルガンが大音量で流れはじめた。
血と土の香りがプンプンと生々しく匂い立つオルガンの荒っぽい音色は、傷付き疲れ果てたお嬢の心を灼熱の風で浄化していくようだった。

「お嬢も踊らなぁい?」

玲子は身体を左右に大きく揺らしながらラフに手拍子を取ると、曲の盛り上がりと同調するように徐々に天を仰ぐように顔を上に向け、両手を天に突き上げるように豪快に踊った。
踊りが苦手なお嬢が音に合わせて気の向くままに身体を揺らすと、踊る事がこんなに心地良くて心のバランスを整えてくれるものだと初めて気が付いた。

「玲子…『純愛ハンター』はこれからどう………」

と、お嬢が気持ち良さげに踊る玲子に尋ねかけた…瞬間…!
バーン…!

「死ねっ…玲子ぉぉっ…!」

事務所入り口のドアから数人の女たちが一丸となってなだれ込み、

「うぁっ…!」

先頭の女が玲子の背中に体当たりするように、刃物で一突きした…!

「れっ…玲子ぉぉっ…!」


裁き10(最終回)、『純愛という名のエンターテイメント』につづく。
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