この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
初メテノ夜ジャナクテ
第1章 1
 私が笑うと、両側の犬歯が口唇の端からちらっと覗く。
 小さいころからずっとそうで、人に見られるのがいやだったから、あまり笑わないようにしていた。
 でも、笑顔って自然と出ちゃうから、「見られたくない」という気持ちと混ざって、眉が下がった自信なさそうな泣き笑いの顔になっちゃうんだ。
 私はこんな自分の歯がきらいで、大人になったら抜きたいって思ってたけど、お味幼稚園の賢人くんはいつも、「りおの歯、可愛い」って言ってくれた。
 賢人くん、趣味悪いな。
 でも、リスとかハムスターが好きって言ってたから、こういう歯も平気なのかな。
 賢人くんは、コンプレックスだらけの私と違って、すごく整ったきれいな顔をしている。細い顎、少し目尻がつった大きな瞳、指どおりがよさそうなサラサラの茶髪。明るいし運動もできるから、小さいころからずっとモテてた。いつも教室のすみにいた私とは正反対。
 なのに、一人でいる私と目が合うとこっちに寄ってきて、「りおもいっしょにやろう」って言ってくれたから、私はずっと、一人ぼっちになったことはなかった。
 今はお互い大人になって、毎日いっしょにいることはもうなくなったけど、つらいときの私はいつも、心の中で賢人くんの顔を思い浮かべてしまう。


 電話が、つながらない。
 深夜二時。ベッドに横になってスマホを握りしめたまま、液晶画面に映る電話番号とにらめっこしている。
 ついこの間までつながった電話番号は、何度賭けても、「お客様のおかけになった番号は……」と無機質なアナウンスを繰り返すだけだった。その冷たい機械の声を聴いていると、心臓が凍りつきそうになる。
「もしかして、だまされたのかな」
 たどりつきたくなかった答えだけど、それ以外になさそうだった。
「ヴェリーロゼ 嘉村さん」と電話帳に登録した名前を見ているうちに、吐き気に似たものがこみあげてくる。
 二か月前、ライブハウスで歌っていた私に名刺をくれた嘉村さんは、レコード会社「ヴェリーロゼ」の社員だと言った。何度もうちのバンドのライブを観に来てくれて、契約してメジャーデビューしないかと熱心に口説いてきた。
 いかにもあやしげな話じゃないか、と人に話したら言われるかもしれない。
 けれど、スカウトを経て表舞台へ行った人がまわりにも実在したから、私もつい信じてしまった。
/11ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ