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復讐の味は甘い果実に似て
第6章 絶望へのいざない ~ひかるの告白~
 明日香とは目的の部屋の前で別れ、あたしは恵梨を連れて、部屋に入った。
 すでに先輩は到着していて、あたしたちを招き入れると、荷物を置いてくるように言い、自分で淹れたと思しきコーヒーを飲みはじめた。
 奥の部屋には、あたしの使っている1人用のベッドとは比べ物にならないほど大きなダブルベッドが置いてある。

 恵梨を入口の部屋に残して、あたしは奥のベッドルームでバッグから出したミネラルウォーターを一口飲んだ。
 緊張のせいなのか、さっきから咽喉が渇いて仕方ない。
 
 ああ、もうすぐ、あのベッドの上で、あたしは先輩に女にされるのだ。
 それも恵梨の目の前で。
 
 そう思うと、あたしの頭のなかでああだこうだ考えていたことが、全てすっ飛んだ。
 無理だ。
 昨日の夜、今日の参考にしようと見た無修正動画と同じくらい、無理だ。
 
 先輩に抱かれるというだけでもいっぱいいっぱいなのに、何も知らないあたしが、淫らにふるまうなんて、どう考えても、そんなことができるわけがない。
 
 結局、あたしは先輩がもし彼氏だとしたら、何をお願いするだろうか、という仮定で考えるしかない、ということに、今さらながら気づいたのだった。


「ああ、君の用意が出来たら始めるから、声をかけてくれ。」
 考え込んでいたあたしは、背後から先輩に声をかけられて、思わず身をすくめた。
 もうちょっと、タイミングを考えてから声をかけてくれればいいのに、と思ったが、埒もないことを考え続けて、硬直していたのはあたしだ。
 
 もう、完全に考えがすっ飛んでしまったあたしは、開き直ることにした。
 最初に処女だということも何もかも話して、あたし自身、身軽になろう。
 そのうえで、先輩に最大限、甘えよう。

 そうするしかない、とあたしは思った。

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