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復讐の味は甘い果実に似て
第3章 復讐への階段 ~明日香の告白~
「だいたい、なんで本間のバカなんかと浮気してんのよ! もうすぐ新田さんと婚約するんじゃなかったの!」
 ひかるがさらに泣き続ける恵梨を問い詰めていた。

 新田さんは恵梨の自慢の彼氏だった。
 恵梨によれば、新田さんはすでにとある自動車会社の研究所に就職が内定していて、結婚とかそういう話だったら、超のつく優良物件だ。
「・・だって、会えなくて寂しかったし・・」
 こっちが聞くのも嫌になるほど、ベタでクズな言い訳を恵梨がしはじめた。

 前に恵梨から聞いたところでは、新田さんは、恵梨との婚約の資金にするために、教授の手伝いをして、お金を貯めているという話だったはずだ。
 全部、恵梨のことを想ってのことじゃないか。
 そういう人を放っておいて、よく本間みたいなバカと浮気ができるな、と思う。
 
 恵梨のためにそこまでしてきた人が、自分の目の前で、浮気の現場を見せられたのだ。
 その絶望は、彼氏とはそれなりの関係が続いているわたしなどには、想像もできないほど深いものだろう。
 わたしには想像もできないほどの絶望感が、復讐という炎を燃え盛らせているのだから、恵梨の言うような楽観的な見通しなど立つわけがない。
 
 しかも、わたしたちは、恵梨の嘘にまんまとだまされた挙句、集団で押しかけて、復縁を迫るなどという、とんでもないことをしてしまった。
 新田さんは、僕は善人面して人の傷を抉りにくるような奴は大嫌いだ、と言っていたが、わたしたちはまさにそれそのものだった。
 今さら謝ったところで許してくれるわけがない。

 まちがいなく、新田さんは本気だ。
 本気で、わたしたちを使って、恵梨への復讐を果たすつもりだ。
 激しい怒りを宿した新田さんの目を思い出して、わたしは恐怖に体がすくむのを感じた。
 第一、わたしは、こんな話を自分の彼にどう説明すればいいんだろう。
 恵梨の忌々しい泣き声と、不毛な言い訳が続くなかで、わたしは自分がどうするべきかを決めかねていた。

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