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復讐の味は甘い果実に似て
第3章 復讐への階段 ~明日香の告白~
「指示は以上だ。早速、明日にでも例の産婦人科に行ってくれ。復讐の日取りは、君たちの低用量ピルが効き始める日から考えて、大体、1カ月後くらいにする。詳しい日取りと場所は改めてメールで伝えるから。」
 一方的に指示を伝えると、新田さんはそのまま席を立とうとした。

 正直、ピルを飲め、という指示は、わたしには高すぎるハードルだった。
 正確には、ピルを飲むことではなく、新田さんと生でセックスする、ということが、だ。
 彼とさえしたことがないことを、どうしてこの人とできるというのか。
 怒りに駆られたわたしは、新田さんをにらみつけて、言い返した。

「何だか新田さんは一人で勝手に盛り上がってるみたいですけど、わたしたちが素直に指示を守るとでも思ってるんですか? そもそも、復讐の道具なんて、あなたが勝手に言い出したことでしょう。当日、自分以外は誰も会場にいなかった、なんてことにならなければいいですけどね。」

「……そうなれば、君たちは人として恵梨と同類のレベルに堕ちるだけだ。自分の都合で僕の傷を抉りまわして傷口に塩をすり込んだ挙句、約束したことにさえ唾を吐いて逃げたクソみたいな連中、として末永く記憶させていただくことにするよ。」
 
 わたしは何も言い返せなかった。
 確かにその通りだ。
 思えば、新田さんはここまで、何一つとして強制はしていない。
 今の指示にしたところで、逃げようと思えば、いつでも逃げられるのだ。
 だが、逃げるということは、わたしに守るべき筋を捨てろということだった。
 そんなことはしたくない。
 それをしたら、私は本当に意地もプライドもない人間になってしまうだろう。

「ああ、それと、新田さん、って姓で呼ばれるのは嫌いなんだ。できれば別な呼び方にしてくれ。先輩でもなんでもいい。」
 そういうと、新田さんならぬ先輩は、席を立ってカフェの階段を下りて行った。

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