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レディー・マスケティアーズ
第10章 ポルトス&ダルタニァン ――パークサイド・パレス
「田野倉! 一人抜かしているぞ!」
 今度は、運転席から浩一が罵声を浴びせる。
 首都高も、びっしり車の列だ。羽田線に入ったベンツは、ようやく浜崎橋ジャンクションを過ぎたところだった。
「浩一! おっ、おまえ、上司に向かって……。いえ。もう一人は、わたしのいる特命企画部に入ってきた山岸彩也子です。どうということのない女でしたが、一週間ほど前、彩也子を名指しして取り立て屋が会社に怒鳴り込んできた事件がありました。話を聞くと、あまりに不幸な身の上で、助けないわけにはいかないと……」
「それで、その女をあのマンションに囲ったのか? この馬鹿! その取り立て屋も仲間だとは考えなかったのか! それで? その女とは、いつからこうなった」
「はい。三日前、いや五日前からです」
 指を折りながら、田野倉が消え入るように言う。
「そんなにかよ! 道理で、近頃あの女の顔を見ないと思ったら、おれたちに内緒で飼ってやがったのか!」
 ハンドルを握る浩一が、派手に舌打ちした。
「それで、あの巨乳女におまえは何を?」
「何って、それはもう何でも言うことを聞く女ですから。脱げと言えば、喜んで脱ぐ。しゃぶれと言えば、嬉しそうに咥え込む。犬になれと言ったら、四つん這いになるだけじゃなくて、わんわんと鳴くまでする。あれは完璧な牝奴隷ですよ。しかも体ときたら……」
「馬鹿野郎! そんなことを聞いているんじゃねえ! その女に、どこまでしゃべったかを聞いているんだ!」
 茂は、火の点いたタバコを田野倉に投げつけた。
「いえ、いえ。何も。しゃべったと言えば、桜井美里があの部屋にいる頃、浩一といい仲だったことくらいで……」
「この野郎! 他人に罪をおっかぶせるつもりか! おまえだって、美里を盗み食いしただろうが!」
 浩一はハンドルから手を放し、後部座席の田野倉につかみかかろうとした。
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