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レディー・マスケティアーズ
第12章 ミッション終了 ――横浜 ホテルのスィートルーム
 そんな中、新入りのダニタニァンは緊張の面持ちのまま、隅っこの席で体を硬くしていた。
「おいでよ、綾香。あんたが横浜を知らないと言ったから、ここにしてもらったんだよ」
初対面以来、すっかり姉貴を気取っているポルトスが肩を抱くようにして、ダルタニァンこと三好綾香をみんなの前に引き出した。
「そうさ。あいつらが女を堕とす時、催淫剤や自白剤を使うってことを、あんたが事前に教えてくれたから、抗毒剤を準備しておくことができたんだ。礼を言うよ。お陰で命拾いしたわ」
 アラミスが、珍しく殊勝な口調で言った。
「薬のことは、美里から聞いていましたから」
三好綾香が、小さく顔を伏せた。
「あなた、桜井美里とは昔からの親友だったんですってね」
 アトスの問いかけに、綾香がこっくり頷いた。
「家も近くで、高校の登下校はいつも一緒でした。家族のこと、部活のこと、好きなアイドルのこと。わたしたち、お互いに知らないことなど何一つありませんでした。そのうち家族同士も仲良しになって、家ぐるみの付き合いになりました」
 自分の両親や美里の両親のことまでを懐かしそうに語る綾香の言葉に、アラミスやポルトスも、その都度頷く。
 家族の話が出た時、離れた場所にいた松永の眉がびくりと動いたのに気づいたのは、アトス一人だった。
「それより、何か飲んだら? お酒がダメなら、ソフトドリンクをオーダーするよ」
ポルトスの言葉に、綾香が首を振る。
「いいえ。わたし、秋田の出身ですよ。できたら日本酒、大吟醸の冷酒を」
 あちこちで笑い声が上がり、ルーキーの顔にもようやく打ち解けた様子が見て取れた。ダルタニァン。誰もが彼女を、銃士隊の新しいメンバーとして認めていた。
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