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レディー・マスケティアーズ
第8章 アトス ――トーホー開発 経理部
「ポルトスから連絡が入りました。今、スピーカーに切り替えます」
 JR恵比寿駅西口裏手の雑居ビル。その八階にある「海綿清掃」の事務室で、アトスこと館山千尋は所長の松永に声をかけた。すかさず松永がマイクに向かう。
――よし、ポルトス。松永だ。守備のほうは?
「手筈どおり、パークサイド・パレスへの侵入に成功。死んだ桜井美里が暮らしていた部屋です。侵入どころか、今やここの住人ですけれど」
 ポルトスこと山岸彩也子は、くすっと笑い声を上げた。
――住人?
「ええ。もう四日になるかしら。部長の田野倉祐作とのハネムーン生活を満喫しているわ。田野倉ったら、一時もわたしのそばから離れないものだから、本部に報告することもできなくて……。でも、今日から三日間、田野倉は札幌に出張。だから、坂上ちゃんに連絡してください。マイクでもカメラでも、好きなだけ仕掛けてもらえるわ」
――よし。すぐそちらに向かわせよう。ほかに収穫は?
「死んだ桜井美里だけど、田野倉から聞き出した話によると、思った通り、木庭浩一のペットの一人だったみたい。だけど、思いのほか純な娘で、浩一とは、そう長い付き合いではなかったそうよ」
――そうか。まあ、無関係という線は消えたな。
「ええ。それよりおかしいのが、このマンション。トーホー開発が社員寮代わりに何部屋か所有しているというけれど、間取りは1LDKで、広さも内装も独身寮にしては豪華すぎる。違う目的で買ったんじゃないかしら」
――なるほど。違う目的か……。
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