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わたしの心が消えるとき
第9章 闇の向こう
いきなりその名前を聞かされて、二人は息を飲んだ。

姿を消して以来11年、一切の音沙汰がなかった。
ただ、信じて待つしかなかった。
もちろん、心配はしていた。
しかし長い年月が経ち、自分の生活もある中、渚と再会できる事は、半ば諦めていた。
真由とほのかは、時々連絡を取り合っていたが、彼女の事はあまり話題に出なくなっていた。

しかし…
短い間でも、共に過ごし戦った日々。
忘れられないあの体験は、消して色褪せる事はない。
二人の心に鮮明に残っていた。
渚の思い出も…

ほのかは
「今でも大切なお友達です」
真由は
「会えるなら、もう一度会いたいよ」

香澄はそれを聞いてホッとしたように
「聞いたでしょ?入ってきて」


リビングのドアが開き、女性が入って来た。
牧野紗耶だ。
小さく会釈した彼女の後ろにいたのは…

かつては美しい少女だった。
勝ち気な瞳。他を寄せ付けない態度を取りながら、実は誰より友情に厚い。
今は醜い男の呪縛も解け、自分を取り戻し、大人の女性として独り立ちしていた。

彼女は少し恥ずかしそうに立っていた。
その美しさは、さらに磨きがかかり、亡き母を越える輝きを放っていた。

真由もほのかも、言葉が出なかった。
ただ涙が止めどなく溢れるだけだった。

先に声をかけたのは彼女だった。

「真由、ほのか、ただいま」



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