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独占欲に捕らわれて
第5章 返済
金額が金額なだけに申し訳ないと思った千聖だが、返そうとしたところで無駄なのはもう分かっているため、諦めた。千聖の案内で電車を乗り換え、2時間かけてふたりは千聖の故郷まで来た。駅から出ると、紅玲は興味深そうに景色を見回す。
「へぇ、ここがチサちゃんの故郷か。のどかなところだね」
「なんにもない田舎よ……」
千聖は苦虫を噛み潰したような顔をして、辺りを見回した。あるのは畑や田んぼ、そして小さな住宅街だ。

(またこんなところに来るなんてね……)
千聖はため息をつくと、紅玲を見上げた。
「私は今から実家に行くけど、ファミレスで待っててもらっていい? 右に向かって歩いたら十字路があって、それを左に曲がったら、ファミレスがあるはずだから」
「オーケー、じゃあそこで待ち合わせってことで」
「えぇ、それじゃ」
待ち合わせ場所が決まると、千聖は早足で実家へ向かう。

「さっさと用事終わらせて、こんなところから帰るんだから……」
故郷を嫌う千聖は、一刻も早くこの田舎町から離れたくて仕方がなかった。千聖の実家は、駅から歩いて10分のところにある一戸建てだ。汗を滲ませながら到着すると、広々とした庭にシルバーの軽自動車が1台だけ停まっている。それは母である光恵の車で、千聖がまだ中学生の頃に中古で購入したものだ。
「まだあんなオンボロ乗ってるんだ……」
千聖は光恵の車を一瞥すると、玄関を開けた。

「ただいま」
光恵が声をかけると、階段を降りる音が聞こえた。小太りで白髪混じりの中年女性が、額に汗を滲ませながら出てきた。彼女が母の光恵である。
「おかえり、千聖。待ってたのよ」
光恵は笑顔で出迎えてくれるが、千聖は冷めた目で彼女を見る。

「もう、お正月やお盆になっても帰ってこないんだから。たまには顔見せなさいよね」
「他に言うことあるんじゃない?」
千聖が苛立ちを隠さずに言うと、光恵は不機嫌そうな顔をする。
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