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独占欲に捕らわれて
第5章 返済
「なにを言えって言うのよ?」
(もう、全然変わってないんだから、この毒親は!)
千聖は舌打ちをすると、ズカズカと音を立てて家に上がる。
「ちょっと千聖!」
咎めるように名前を呼ばれ、千聖は振り返って光恵を睨みつけた。

「あのさ! まずはバカ兄貴の借金で迷惑かけてることを謝るべきなんじゃないの!? こちとら貴重な休日潰してこんなところまで来てるんだからさ!」
「なんでそんなこと言うの? 家族じゃない……」
光恵は眉尻を下げる。
「家族だったら何してもいいって言いたいわけ!? なんで私があんなバカのために、時間と大金無駄にしなきゃなんないの? あいつのせいで……あんた達のせいでどれだけ私の人生が台無しになったと思っているのよ!!」
千聖が感情的になって怒鳴ると、光恵はその場で泣き崩れ、土下座をして何度もごめんなさいを繰り返した。

「いいよ、どうせ悪いと思ってないの分かってるから。自分が許して欲しいだけのあなたの謝罪に、なんの価値もない。いいから借金取りの名刺とか、事務所の住所が分かるもの持ってきてよ」
「悪いと思ってるわよ……。だから……」
「いいから! さっさと持ってくる!」
千聖が言葉を遮って怒鳴りつけると、光恵は鼻をすすりながらリビングへ行く。

「あーもう……。これだから来たくなかったのよ……」
苛立ちが収まらない千聖は、親指の爪を噛んで片足を小刻みにゆすった。
「千聖、これなんだけど……」
光恵は涙を拭いながら、クリアファイルを持ってきた。受け取って中を確認すると、借用書のコピーと名刺が入っている。
「もうこれっきりにしてよね。2度と連絡してこないで」
千聖が冷たく言い放って玄関へ向かうと、光恵は再び泣き崩れた。

「本当に反吐が出る……!」
千聖は待ち合わせ場所であrファミレスに向かいながら、スマホを操作する。母親と実家の固定電話番号をブロックすると、電話帳から削除した。

ファミレスに入れば、気だるげな女子高生アルバイトが千聖を出迎える。
「お客様何名様ですかぁ?」
「待ち合わせなの」
「奥にある喫煙席の窓際にいますんで」
アルバイトは人差し指でさしながら言う。紅玲が真剣な顔で小さなノートパソコンを操作している。
「ありがとう」
千聖は早歩きで紅玲の元へ向かう。
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