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独占欲に捕らわれて
第6章 契約期間開始
「じゃあちゃちゃっと置いて、帰りましょう」
「はいはーい」
ふたりは立ち上がり、千聖は店の外に行き、紅玲は支払いを済ませた。
「オレは駅で待ってようか?」
「そうね、お願い」
千聖は紅玲と別れ、再び実家へ行く。

「どうか家に引きこもってるか、買い物してるかしていてください……。もう、会いたくない……」
祈りながら実家に着くと、祈りが通じたのか、光恵の車はなかった。千聖は小走りで郵便受けに封筒を入れると、急いで駅に行った。

駅が見えてくると、喫煙所で煙草をふかしている紅玲の姿が目に入る。紅玲は千聖に気づくと、笑顔を浮かべて小さく手を振った。
「急いで来て、そんなにオレに会いたかった?」
「一刻も早くここから消えたいの」
千聖は紅玲の腕を掴むと、駅に入って改札を抜けた。

ホームに行くと無人で、千聖と紅玲のふたりきりになる。
「あっはは、人がいない駅って変な感じ」
誰もいない駅がそんなに珍しいのか、紅玲は写真を撮り始めた。
「こんなところの写真撮って、なにが面白いの?」
「人のいない駅なんて、東京じゃ拝めないからね。あとは、初めて東京から出た記念も兼ねてね」

紅玲は千聖の隣に行くといきなり肩を抱き、インカメにしたスマホで写真を撮った。
「ちょっと……!」
「うんうん、チサちゃんはどんな顔をしても可愛いね」
急に写真を撮られて怒る千聖の頭をおさえながら、紅玲は嬉しそうに写真を眺める。

「消しなさいよ」
「嫌だね」
紅玲がスマホを持った手を伸ばすと、千聖のスマホが鳴った。
「チサちゃんに送っといたよ」
紅玲はイタズラっ子の様に笑うと、スマホをしまう。

「アンタねぇ……」
怒りながらも写真が気になる千聖は、LINEを開く。紅玲とのトークを開くと、1枚の写真が送られてきている。紅玲は無邪気な笑顔で千聖の肩を抱き、千聖はキョトンとした顔をしている。
(嫌な写真……)
千聖がトーク画面から写真が消える方法が無いか検索していると、スマホ画面を遮ってお茶が差し出された。

「喉渇いちゃってさ。チサちゃんもどーぞ」
紅玲は更にお茶を近づける。
「……ありがとう」
千聖はお茶を受け取ると、さっそく開けて喉を潤した。
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