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独占欲に捕らわれて
第6章 契約期間開始
電車が来たのは写真を撮ってから20分後。乗ってみれば貸切状態だ。
「貸切状態ってだけでびっくりだけど、バスみたいな電車っていうのにもびっくりだよ」
紅玲はまたしても写真を撮りながら言う。

「朝や夕方ならそれなりに利用者はいるけど、この時間は少ないから1両なんじゃない? 通勤、通学にはよく使われるから3、4両くらいあるもの」
「なるほどねぇ」
千聖の説明を興味深そうに聞くと、紅玲は彼女の顔をのぞき込んだ。

「なによ……?」
「ね、東京に帰ったら、さっそくホテル行こう?」
(本当にさっそくね……)
千聖は内心呆れ返りながら、頷いた。

「いいわよ」
「よかった、断られないで」
にっこり笑う紅玲に、千聖は無言でそっぽを向く。
(100万円もの借金返してもらったんだから、我慢我慢……)
千聖は自分に言い聞かせながら、電車に揺られた。

東京に着くと、ふたりはホテル街へ行く。
「んー……ここでいい?」
紅玲が指さしたのは、このホテル街で1番高いホテルだ。
「いいけど、ここ結構高いわよ?」
「値段なんて、いちいち気にしないよ」
紅玲はさっさとホテルに入っていく。

「金持ちは違うわ……」
千聖はひきつり笑いをすると、紅玲のあとをついて行く。紅玲が受付で部屋をとっている間、千聖は受付から少し離れたところにあるエレベーターの横に寄りかかる。金銭のやり取りをしているそばにはできるだけ行かないというのは、千聖が自分で決めたルールだ。

「4階だってさ、行こう」
紅玲は鍵をプラプラさせながら来ると、エレベーターのボタンを押す。どうやら元々1階にあったらしく、すぐにドアが開いた。
(はぁ、これから1ヶ月、コイツとタダでセックスか……)
千聖は重い気持ちを引き摺りながら、紅玲とエレベーターに乗る。

「ふわぁ……はぁ……。あんなに電車に乗ったり歩いたりしたの初めてだから、眠くなっちゃったよ……」
見上げれば、紅玲は薄ら涙を浮かべながら、眠そうな顔をしている。
「そんな状態で大丈夫なわけ?」
「なにが?」
キョトンとする紅玲に、千聖は呆れてものが言えなくなる。
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