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独占欲に捕らわれて
第6章 契約期間開始
ふたりは格安のファミレスに入ると、雑談をしながら食事を楽しむ。……といっても千聖には退屈で、誰でもいいからホテルでも食事でも誘ってほしいと思っていた。
千聖の願いが通じたのか、彼女のスマホに着信が入る。画面には優奈の名前が浮かび上がる。
「ちょっとごめんなさいね」
「うん、いいよ」
千聖は断りを入れると、ファミレスから出て電話に出た。

「もしもし、優奈?」
『千聖ー! ね、今暇?』
やたらハイテンションな優奈は、叫ぶように言う。
「……ずいぶん元気ね。暇だけど、なに?」
『一緒に呑もーよ。聞きたいこともあるし?』
(なんだろ? 聞きたいことって……)
千聖は内心首を傾げた。

「よく分かんないけど、いいわよ。どこ行けばいい?」
『んーとね、駅前の居酒屋!』
「オッケー、今から向かうわ」
『あーい!』
千聖は電話を切ると、申し訳なさそうな顔を作って店内に戻る。

「ごめんね、浩二郎さん……。親友がヒステリック起こして大変だから、帰るわね」
浩二郎は一瞬残念そうな顔をして、ぎこちない笑顔を浮かべた。
「大丈夫だよ。千聖さんは友達思いだね」
「数少ない友達なの。お詫びにここは奢らせて」
千聖は5千円札をテーブルに置くと、早歩きで店を出る。2人分で2千円弱なのだが、手切れ金として5千円置いてきたのだ。

「格安だけど、手切れ金置いていくだけ律儀よね」
千聖はそう言いながら、浩二郎の連絡先をブロックして消した。

駅前の居酒屋に行くと、優奈は大好物のカシオレ片手に、野菜スティックをポリポリとかじっている。
「おまたせ、優奈。連絡くれて助かったわ」
千聖がお礼を言いながら座ると、優奈はニヤニヤしながら彼女を見る。
「それはどういたしまして。ところで、どういう風の吹き回しよ?」
「はい?」
なんのことか分からず、素っ頓狂な声が出る。

「とぼけなくてもいいわよ。紅玲くんよ、紅玲くん。アンタ、あんなに嫌がってたのに、一緒にいたんだって?」
「なんで知ってんのよ!?」
千聖は思わず大声を出し、店内の人々の注目を集めてしまう。千聖は慌てて謝ると、優奈をじっと見つめる。
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