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独占欲に捕らわれて
第6章 契約期間開始
ホテルから出ると、千聖はさよならと短く言って、早歩きでその場から離れた。
「はぁ……、このまま今日が終わるの、なんか癪だわ……」
千聖がカリカリしながら帰路を辿っていると、スマホが震えた。

「誰かしら?」
画面を見れば、浩二郎という男性からLINEが来ている。彼はパパリストのひとりで、千聖から彼に連絡することはない。というのも、浩二郎はどこにでもいるサラリーマンで、セックスはまぁまぁ上手いが羽振りがイマイチだ。食事に行けばファミレスの中でも1番安いところで、ホテルに行っても宿泊料金にならないよう、時間をこまめに気にしている。
千聖としてはどんなに安い食事でも構わないが、この男は千聖が注文した後に財布の中身を確認し、自分の注文を決める。ホテルに関しても千聖は高望みしないが、浩二郎は料金看板と自分の財布を交互に見てから決めるのだ。
千聖に渡すお小遣いも、ほかの男性は平均5万円だが、浩二郎は1万5千円、多くくれても3万円と渋い。

「どうしよっかなぁ……。まぁ……アイツで終わるよりはマシかも……?」
悩んだ挙句LINEを開くと、ご飯とホテルの誘いだ。千聖はイエスと答えて待ち合わせ場所を決めると、スマホをしまって待ち合わせ場所へ向かった。

待ち合わせのビル前に行くと、くたくたの薄手のコートを着た中年男性が、そわそわしながら立っている。背は165センチ程度で、千聖と大して変わらない。むしろ千聖のほうが少し高いくらいだ。
浩二郎は千聖を見つけると、小さく笑って手を振る。
(相変わらず、ぱっとしない男ね……)
千聖は内心後悔しながら、手を振り返して近づいた。

「久しぶりだね、千聖さん」
浩二郎は鼻の下を伸ばしながら、声をかける。
「そうね。さっそくごはんにしない? 私、おなかすいちゃった」
千聖は悟られないように明るく振る舞い、はやく終わらせようと食事を催促する。
「僕もだよ。さっそく行こうか」
浩二郎はおずおずと手を差し伸べ、千聖はその手を握った。身長同様に小さい手は、どこまでも頼りない。
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