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独占欲に捕らわれて
第6章 契約期間開始
「はたから見ればね。でも紅玲が本気で好きになった女は、皆アイツの金目当てだった。逆に紅玲を好きになった女は、頭のおかしい連中だった。それで一時は、退学も考えていたらしい」
「へぇ、アイツはアイツで大変だったのね……。で、その頭のおかしい連中って、具体的にどうおかしかったの?」
「付き合ってもいないのに、付き合ってると思い込んでストーカーしてたんだ。あれには僕も参ったよ……。家の方向が一緒っていうのもあって、紅玲と一緒に帰ることが多かったんだけど、『私と彼の時間を取らないで!』って、ナイフ片手に脅されたっけな……」
「なにそれ、犯罪じゃないの……!」
驚きのあまり、千聖は目を見開いた。

「僕はまだマシなほうさ……。可哀想なのは小林助教授。若くして助教授まで登り詰めた才女でね、おまけに可愛らしかった。紅玲は彼女の講義が好きでね、講義が終わると毎回のように質問をしたりと熱心だったよ。女史も紅玲を、純粋に生徒として可愛がっていた。ふたりは本当に、健全な助教授と生徒だったんだ……」
「頭のおかしい連中は、ふたりが出来てると思い込んだ、と……」
千聖の言葉に、斗真はうなずく。
「そういうこと。人づてに聞いた話だから、どこまで本当かは分からないけど、女史宛にカミソリが入った呪いの手紙を送ったとか、下駄箱に虫の死骸や使用済みコンドームを入れたとか、ひどいいじめをしていたらしい。少なくとも、彼女達の嫌がらせのせいで、女史が精神病院に入院したのは事実だ」
女性達の執念に、千聖は言葉を失う。

「紅玲はひどく落ち込んだよ。そんな紅玲に、ミチルっていう同級生が近づいた。彼女は必死に紅玲を慰めて、他の女性達を言い負かせたりした退学に追いやった。当時はすごい味方が紅玲についたと思ったよ。紅玲もそんな彼女に心を開き、ふたりは交際した」
「それでめでたし、って訳ではないのよね?」
千聖の言葉に、斗真は重々しく頷く。

「あぁ、残念なことにね……。卒業したら幸せに結婚するんじゃないかって思えるくらいお似合いだったし、幸せそうだった。でも結局、ミチルも金目当てさ。留学に必要な金を巻き上げたら、紅玲をボロ雑巾のように捨てたんだ……」
当時の憤りを思い出したのか、斗真は一気に芋焼酎を飲み干した。
「紅玲も苦労してるのね……。でも、どうして私にその話を?」
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