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独占欲に捕らわれて
第6章 契約期間開始
「それじゃあ、お言葉に甘えて。千聖さんは、これから帰る予定?」
「えぇ、そうよ。途中でコンビニにでも寄って、お酒買って帰るつもり」

「もし嫌じゃなかったら、一緒に呑まない? もちろん、おごるよ」
斗真は茶封筒が入っているポケットを叩きながら言う。
「遠慮なくご馳走になるわ」
こうしてふたりは、居酒屋に向かった。
「てっきり、静かなバーが好きなのかと思った」
「あぁいうところはキザったらしいイメージで、あんまり好きじゃないんだ。なにより、冷奴がない」
メニューを見ながら真面目な口調で言う斗真に、千聖は笑った。
「いいわ、変にカッコつけてないで。私も居酒屋の冷奴は割と好きよ」
千聖は笑いを堪えながら店員を呼び止めると、冷奴2つと生ビールを頼んだ。

「枝豆と芋焼酎を」
斗真の注文に、千聖は肩を震わせる。店員が厨房へ行くと、千聖は声をあげて笑った。
「なにがそんなにおかしいんだい?」
「だって、おじさんくさい注文なんだもの。似合わないわ、最高」
「それはお互い様でしょうよ。千聖さんはさっきから、僕のことを意外だなんだって言ってるけど、僕からしたら千聖さんがそんなに笑う方が意外だよ」
斗真は苦笑しながら、ちょうど運ばれてきた芋焼酎をひと口呑んだ。

「そう? あぁでも、合コンの時はとっとと帰りたかったし、紅玲がうっとうしかったからね……」
「アイツはなぁ……。昔からあんななんだ」
紅玲の名前が出ると、斗真は困ったように笑う。
「昔から? ってことは、付き合い長いのね」
「あぁ、高校と大学が一緒なんだよ。でも、紅玲から女性にあそこまで積極的になるのは、初めて見たな……」
斗真は煙草を咥えながら、穏やかな笑みを浮かべた。

「いつもあんな女たらしじゃないの?」
「むしろ女性が苦手なんだよ。ほら、アイツは顔がいいし金もあるだろ? だから、昔から女に囲まれてたんだ。特に大学生の頃は、彼女が途切れなかったっけなぁ……。でも本人は、常に寂しかった……」
斗真は芋焼酎に視線を落とした。
「それってワガママじゃない?」
千聖は不機嫌を隠さずに言うと、生ビールを半分近く飲んで、枝豆を口に放り込んだ。
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