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独占欲に捕らわれて
第7章 苦悩
「おまたせ」
千聖が声をかけると、紅玲は肩を揺らした。スマホをしまいながらいつもの笑顔を作り、千聖を見る。
「おはよ、チサちゃん。そんなに待ってないよ」
「もう“こんにちは”の時間だけど……。待たせてないのならよかった。そんなことより随分と真面目くさった顔でスマホ見てたけど、元カノから?」
茶化しながら言った後に、千聖は後悔した。

「まさか。そんなのから来たら、連絡先ブロックして消しちゃうよ。また迷惑メールが来てね……。最近のは巧妙だから、どっちだろって見てただけ」
紅玲は顔色を変えることなく言うと、手を差し出した。
「そんなことより、はやく行こうよ」
「そうね」
千聖がその手を取ると、紅玲はホテル街へ向けて歩き出す。

「この前ここが気に入ってたみたいだけど、ここでいい?」
そう言って紅玲が立ち止まったのは、前回に来た高級ホテルだ。
「むしろ嬉しいけど、大丈夫なの?」
「オレにお金の心配は不要だよ。入ろっか」
紅玲にエスコートされ、ホテルに入ると、千聖はエレベーター前で会計が終わるのを待つ。

「おまたせ。この前とは違う部屋みたいだよ」
紅玲は声を弾ませながら、目の高さで鍵を振る。
「それは楽しみね」
千聖がそう言ってエレベーターのボタンを押すと、紅玲は目を丸くして彼女の背中を見つめた。

エレベーターは3階から降りてきて、ふたりを出迎えた。千聖が先に乗ると紅玲は4階のボタンを押した。
「ね、どういう風の吹き回し?」
紅玲は不安そうな顔で、千聖を見ながら聞く。
「なんのことかしら?」
「今までと全然対応が違うからさ。前は合コンの時よりマシになったとはいえ、刺々しい雰囲気があったのに、今日はフレンドリーだね」

千聖は納得したようにあぁ、と声を漏らす。
「借金返してもらったし、あと3週間は会うんだから、態度を改めようと思ったの。それにあなた、意外と常識人だったから」
「なるほどね」
紅玲が嬉しそうに言うと、ドアが開く。
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