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独占欲に捕らわれて
第7章 苦悩
紅玲はコンドームをティッシュに包んで捨てると、千聖を抱き寄せた。
「疲れちゃった……」
「私もよ……」
千聖は紅玲の胸板に頬を寄せる。
「少し、寝よっか」
「えぇ……」
ふたりは目を閉じ、寝息を立てた。

夕方6時過ぎ、千聖は背中に痛みを感じて目を覚ました。
「うぅ……、なんでこんなに痛むんだろう?」
紅玲の腕からすり抜け、躯を起こすと、視界に赤がチラついた。

「何……?」
何事かとシーツをよく見ると、血が付着している。
「まさか……」
着乱れたネグリジェが落ちないように押さえながら洗面台へ行くと、背中を見た。背中にはいくつもの引っかき傷が出来ており、ネグリジェにも背中にも、乾いて赤黒くなった血がついている。

「どうすんのよ、これ……」
千聖は肩を落としてベッドへ戻る。まだ寝息を立てている紅玲の背中を見てみると、やはり引っかき傷が出来て、シーツにも染みが出来ている。

「んー……。あれ? チサちゃんは……?」
目を覚ました紅玲は、寂しそうな声で千聖を呼ぶ。
「私ならこっちよ」
千聖がネグリジェを直しながら声をかけると、紅玲は反射的に振り返る。
「一瞬、女神様かと思ったよ……。おはよ、チサちゃん。やっぱりそれ、よく似合っているよ」
「それはどうも……」
歯が浮くような口説き文句に、千聖は頬を引き攣らせながら言葉を返す。

「ねぇ、血がすごいんだけど……」
千聖は背を向け、ネグリジェに付着した血を見せる。
「もしかしてオレ、引っ掻いちゃった?」
「そうよ。……私もね」
千聖が気まずそうに言うと、紅玲は声を上げて笑った。
「あっはは、それは流石に知ってるよ」

「笑い事じゃないわよ……。ベッドも汚しちゃって……」
「これくらいなら怒られることはないよ」
「でも……」
千聖はベッドについた血に触れながら、眉尻を下げる。

「これくらいの血汚れでお金とるなら、処女がホテルに連れてこられたりなんかしないよ」
「……平然とおぞましいこと言うわね」
「そう?」
紅玲は不思議そうに千聖を見る。
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