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官能小説家のリアル
第2章  悩み


 舌先でくすぐられる場所から、熱が生まれる。その場所が増え、やがて全体が一つの熱へなっていく。
「あっ、あんっ」
 背中を反った美波の膝を立て、直哉が顔を埋める。クリトリスを刺激された美波は、眉を歪めて甘い声を漏らす。
「あぁっ、んんっ」
 愛しい彼女の浮気を疑ってしまったのは、愛情の深さから。やきもちと言ってもいい。
 男でも、好きだから不安になる。好きだから、自分だけを見ていて欲しい。
 直哉が、マンションの前で待っていたのはそのせい。
 でも今、こうして愛を確かめ合っている。
 単純かもしれないが、それだけで直哉は安心出来た。
「美波……?」
 顔を上げて彼女を見る。
 熱っぽいような表情で頷く美波を見てから、直哉は彼女の中へ挿いった。
「あぁんっ、直、哉ぁっ、はぁっ」
 内壁を擦られる刺激に、美波が体を震わせる。
 そんな彼女は、飯野のことを思い出していた。
 正確に言えば、飯野というより彼が担当する雑誌のこと。
 普通の恋人同士の日常のセックスを、曝け出すようなことはしたくない。
 どこをどんな風に愛撫されて、どのように喘ぐのか。
 美波の中でのBLは、ファンタジーの一つ。登場人物は、全て“美”の付く少年や青年。そんな二人が出会い、恋に落ちる。紆余曲折あり、ラストはハッピーエンド。
 美波はハッピーエンドが好きで、悲恋ものは書いたことがない。多くの作家や読者も、特別な設定でなければそんな物語を好む。
 同性愛者に偏見はないが、美波は、自分が書いているのはそれとはまた違うものだと思っている。
 やはり、一言で言うなら“ファンタジー”。
「あっ、あんっ、はんっ」
 深く突かれ、一瞬意識が飛びそうになる。
「ヤぁっ、あぁっ」
 深い所で動く塊に、翻弄されていく。
 恥ずかしさも忘れ、美波も腰を使っていた。
「あっ、んんっ、はぁっ」
 美波は、疲れているのも忘れて彼を求める。直哉は、心配だった分彼女の全てが欲しいと思う。
 お互いの想いは同じ。
「あんっ、んっ、あぁっ、ヤぁっ、ダ、メっ、イくぅっ! あぁっ……」
 それは、悲鳴にも似た悦びの声。


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