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官能小説家のリアル
第2章  悩み


 家事全般が苦手。昼夜逆転している生活。忙しい時は電話にさえイライラする時もある。集中している時、話しかけられたくない。
 普通からしたらおかしいことが、美波にとっては普通の生活。それを彼に押し付けたくはなかった。
「美波の方が、収入がいいのは、前に聞いたよ……。だからって、頼る気じゃないからな? 生活費は、オレが全部出すから。美波の収入は、小遣いとして使えばいいし」
「そんなことは、考えてないよ? もし一緒に住むとしたら、全部半分ずつでいいと思うけど……」
 実際、美波はそんなことに拘ってはいない。
 理由があるなら、好きな相手を養っても構わないと考えていてる。
「美波……。ごめん。まだ、一年だもんな? オレ、急ぎすぎだよな……」
「ううん。気持ちは、嬉しいから」
 美波の静な笑みを見て、直哉がニッコリと笑う。
 先月、付き合って一周年のパーティーを二人でした。直哉からの提案だったが、美波は日付までは覚えていなかった。
 その時直哉は小さなホールケーキを買ってきて、ロウソクは一本。増えて刺せない数になったら、数字型のろうそくにしようと笑っていた。
 美波は、そんな直哉が好きで付き合っている。このままずっと、平凡でも幸せな日々が続けばいいと思っていた。
 10年も20年も、“恋人”でいられないのは分かっている。そんなに待たせれば、彼は別の女性へ行ってしまうだろうとも。
 それでも、今の美波には決心がつかない。
 今すぐ結婚、と言われているわけではないのに。
 どうしようもない自分の思いに、美波は溜息を隠した。


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