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官能小説家のリアル
第2章 悩み
「ふーん。大変だなあ」
直哉がハンバーグを口に入れる。
「校閲の専門記号があって、デビューの時に、担当さんが一覧表をくれたの。簡単だから、すぐ分かるけどね」
美波も、デビューの時は原稿が真っ赤で驚いた。
隙間なく校閲が入り、自分は駄目なのかと落ち込んだほど。それに比べれば、今は校閲が入らないページが殆ど。成長したのもだと、自分でも思ってしまう。
「やめよう……。食事が不味くなる……」
「ごめん。知らないこと聞くのが好きだからさあ。でも、ごめん」
美波は、本気で謝っている直哉の頬を指で突いた。
「いいの。私も、自分が知らないこと聞くの好きだもん。直哉から色々聞くの、好きだよ」
美波は本当にそう思っている。
野球やサッカーについて。会社のことでさえ、勤めた経験が無い美波にとって貴重な資料になる。
何よりも、それらを話している時の直哉の活き活きとした表情。本当に好きなんだな、と美波まで嬉しくなってしまう。
「食べ終わって休んだら、ホラーハウス行こうよ」
「えー」
美波は苦い顔。
偽物だと分かってはいても、お化け屋敷系は昔から苦手。
「大丈夫だって。オレがついてるから。今晩も泊るしな」
「うん……」
「何? オレが泊るのが不満?」
直哉がわざとふて腐れたように言うと、それを分かった美波が笑い出す。
「分かった。ホラーハウスねぇ……」
「怖かったら、思いっ切り抱き付いていいからな」
楽しそうに直哉が言う。
「それが目的?」
笑い合ってから、二人は結局ホラーハウスへ行くことになった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「はい。はい、分かりました。一時間以内なら、大丈夫です」
美波のマンションへ戻って寛いでいると、編集者からの電話。
「はい。失礼します」
「どうしたの? 仕事?」
通話を切った後、直哉が訊く。
「ん。校閲原稿を、バイク便で送っていいかって」
「仕事するの?」
美波が隣に座ると、直哉が甘える様に寄り添ってくる。
「ううん。受け取るだけ。今回、直哉の休み中は、仕事サボっちゃう」